***出会った頃みてぇな、喧嘩ごしの付き合いに戻った日々に正直ほっとした。 あの頃俺の頼みをうけてくれたルフィと 問いただし、それを聞き入れてくれたナミさんには、感謝してもしきれねぇ。 この船に乗って本当に良かったと思う。 ***
──幻の海を見つけても あいつは船を降りなかった。
あまりにも唐突に現れたその海は、コックが言っていたように世界のあらゆる魚が同居していた。
淡く深い青をバックに コックが腕を振るった料理を オレはこれが最後だとばかりに たらふく食った。
船の上の皆に、俺にさえも向けられた満面の笑みを振りまく姿を 目に焼き付けておこうと 俺はいくら食べても物足りないと騒ぐルフィと、それを嬉しそうに追い払い料理し続けるコックを盗み見た。
こう、目の前で無邪気にいちゃつく奴らを見るのは それを見慣れた今でもほんの少し胸が痛んだが、この日だけはそれを目に入れても微笑ましくさえ思えた。
ルフィにはコックが、コックにはルフィが・・・・・お似合いだ。 悔しいけれど。
夢を叶えたら、あいつは船を降りるものだとばかり 俺は想像していた。
その夢の地に留まるか、夢を共有する爺さんの元に戻るかと思っていた。
だが想像は想像でしかなかった。
あいつは残ったのだ。
船に、・・・ルフィの元に。
クルーが増えても
月日が流れても、あいつと俺は
つかず離れずの変わらない関係だった。
強いて言えば、夜稀に酒を飲み交わすようになった。 ただの仲間としてくだらないことを話す。 その時間は俺にとってたまらなく愛しくて、同時に堪らなく淋しい時間だった。
俺の、・・・・あいつへの思慕は薄れたように見えて、それでも根っこの方では変わらなかった。
あいつを知る毎に、一緒にいる時間が長くなる毎に、仲間として、男として、惚れなおした。
視界の端に映る姿に焦がれ、ルフィと親しげに話す声に憤りながら惹かれた。
あいつが欲しくて欲しくてたまらなかった。
振り向けよ。
こっちを見ろよ
触りてぇ。
触れさせろ。
俺はお前が好きだ!
お前も俺を好きになれ
なぁ。俺を好きになってくれないか。
きっと愛してる。
そんな気持ちを隠して俺はお前と向き合う。 ただの仲間としてなら隣に居てもいいよ・・・・な?
今にも溢れ出しそうな言葉を飲み込んで グラスを合わせる。
もしかして、あの頃お前もこんな気持ちだったのか!?
遠い過去。 ルフィではなく俺を好きだと言ってくれていたあの頃。
こんな切なくてもの悲しい だがしかし、愛しい感情を俺に向けていてくれたのか?
報われなくとも、手に入らない思いに余計悲しくなろうとも。 同じ空間にいられれば・・・・・その手に入らないと思い知らされる悲しい時間でさえ 宝のように感じていたか?
・・・・なぁ、サンジ。
でもそれも互いに若かった頃のことだ、・・・・今は遠い
ある日俺はとある島で 女を拾った。
拾ったというより、ごろつきに襲われていたのを 気まぐれで助けただけだ。
なのにその女は、俺の後をついてきて離れない。
いくら睨んでも 怒鳴ってもはなれない。
ついには船にまでついてきて
出港してもついにその女は離れようとしなかった。
何も言わずについてきた女は どういう訳かクルーに受け入れられ一緒に航海するようになった。
俺もまた、その女をむげに追いやることが出来なかった。
何故なら、その女の髪が金色で空のような青い目をしていたから。
金の髪と青い目。 共通する容貌。
儚げに海を見る姿が どこかコックと重なった。
だが俺は、女と一線を超えることもなく。 時だけが過ぎ やがて妊娠していたらしい女もチョッパーに赤ん坊を取り上げてもらい船を降りていった。
鷹の目に闘いを挑んだのはグランドラインを何周した頃だろうか。
暇つぶしに戦艦を一断ちするくらいの奴だ。 迂闊に船を寄せる事はしなかった。
俺は鷹の目がいるという島に小船で渡ることになった。
そんなもの一人で大丈夫だと言ったのに
『ゾロだけじゃ迷子になっちまうといけないからなぁ、・・・・・・うーん・・・サンジ。 お前一緒に行け、船長命令だ。』
そんな船長の軽い思い付きで コックと2人小船に乗った。
小船に揺られて半日、さほど大きくも無い島を歩いて数日、はたして辿り着いたそこには かつて目にした大きな剣を背に据えた男の姿。
![]()