***時折荒れる青い空と青い海 そして素敵なレディに囲まれ、毎日は賑やかに過ぎる。 きっとここはパラダイスだ。 ただ何かが・・・パラダイスには足りない。***










 自覚した時には、すっかり懐の奥深くに根付いていた その気持ちを抱えたまま、船に乗り続けて数年がすぎていた。



 あいつとの関係も随分良くなり、以前のように喧嘩もする し、口論もするようになった。 今ではあの頃の一件はなんだったのかと拍子抜けするほどだ。
 
 幾つかの季節が過ぎて、少しは大人になった筈だが 側にいても唯一不自然ではないそんなガキみてぇな関係に 俺は相も変わらず口端を上げ続けた。
 この時だけは・・・こいつの眼に映るのは俺だけなのだ。





 無理やり記憶の底に封じ込めようとした過去は、まるで夢の中の出来事だったんじゃないかと 勘違いさえしちまいそうになる。
 だが違う、
 アレは夢でも願望でもない。 俺があいつを虐げた、事実なのだ。

 元通り、仲間として都合よく振舞って居る自分を時折嫌悪しながらも、コックと一緒の空間にいる幸せを俺は感じていた。
 決して手に入らないとわかってはいたが・・・それでも。
















 ルフィとコックの関係はベタベタしたものではなかったので、それが視界に入っても気にしさえしなければ航海の邪魔にはならく、コックへの想いを胸に抱えたままの俺は・・・それに随分助けられた

 ルフィとの仲をようやく納得し、俺が昔のようにコックを仲間としてみれるようになったのと時を同じくして 意外にも二人が一緒にいるところを頻繁に見なくなったような気がする。




 拍子抜けするほど。
 あの頃のルフィの宣言と意気込みは何だったのかとあきれるほどの あっさりした2人の付き合いは。
 島に降りても別行動という形になって現れた。

 稀に俺がコックの買い出しのお供になっても ルフィはさほど心配するでもなく。
 次第に以前のような 大量の買い出し=俺の当番 という図式が出来上がった。
 ・・・コックに手を出すことはないと信用されているのか、コックが俺に靡く事はないと安心しているのか?
 俺ならば物足りないであろう 「それ」 が、奴らなりの付き合いなのだろうと思うしかなかった。





 それでも。

 奪ってしまおうかと。

 伸ばし掛けた腕を何度躊躇ったことか。






 あの顎を掴みこちらを振り向かせ、
 後ろ髪をなだめるようにたぐり寄せ ヤニくさいであろうその唇に己のそれを重ね。
 歯列を割り舌を潜り込ませあいつを感じたい。
 あの蒼い瞳に俺しか映らないようこの腕に閉じ込めてしまおうか。

 何度その甘美な想像をしただろう。

 その度に過去が俺を押し留め、縛りつける。
 泣かせたくはないのだ。
 もう傷つけたくないのだ。
 あの蒼い目をもう曇らせたくは無いのだ。







 あの頃 覚えた感情を 鍛錬と賑やかな日常で追い払い
──やがて。
 いつしか俺は、ルフィと一緒にいるあいつを暖かい目で見れるようになった。








 そんな航海の中でやがていくつもの海域を抜け、数え切れない陸地を過ぎた。