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あの頃、俺はあいつが好きだった

どうしようもないほど、・・・惚れていた。

好きで好きでたまらなかった

何をされても虐げられてさえ、近くにいられればいいと思うくらいに。
だが、それは。
その状態は、俺はともかく。 
・・・あいつがダメになっちまいそうで。
嫌だった。 
俺はあいつのストイックなまでの生き方に惚れたんだから。
だから間違った想いを封印したんだ。 


・・・・・・・・・いや、違う。 
それは体のいい逃げ道、言い訳だ。 
俺が、俺自身がもうあれ以上傷付きたくなかっただけ。

ずるくて情けねぇ・・・。 
時の経った今ならもっと上手く振舞えるのかも知れねぇけど、あの時はあれが俺の精一杯だったんだよな。
はは・・。 若いってある意味スゲェよな。


あの頃のような激しさは、もうねぇけど・・・。
今でも。

今でも ふと気が付くと目がお前を探してる。
どうにも・・・・・・いつまで経っても不毛だな俺って。
それだけ お前は鮮烈だったんだ。 

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 散々勝手な事をして、たくさん傷つけたくせに。

 惚れてると自覚した途端。 傷付けるのが怖くなった。
 初めて知った臆病な自分。

 誰よりも、何よりも。
 大切で。


 なのに。
 自覚した時にはもう他人のものになってしまっていた。



 欲しくて欲しくてたまらないのに、もう一度触れたら壊してしまいそうで。
 怖かった。










 あれから・・・何もなかったかのように振る舞うコックに 俺は救われた。

 恋焦がれる身体に触れる事は出来なかったが、同じ船のクルーとして存在出来た。 ・・それだけでいいとさえ思えた。



 ───俺は、あいつが好きだったんだ。 改めてそう思う。





 数年前のあの日 初めて触れたあいつの唇。
 触れたはずの唇の感触を思い出すことが出来ないのが 今も。
 ……口惜しい。


 重ねた一瞬後背けられた 泣きそうにみえた横顔と。
 一度だけ快楽の表情の口元で俺の名を形作った奴の顔は、今でも何度となく目に浮かぶと言うのに。
 二度と見ることの無いそれは、まるで幻のようだ。



 他の奴と恋仲になったと知って、悔しかったが当然なのかも知れねぇとも思った。
 傷つけることしか知らない俺より ルフィといる方があいつは幸せだろう。 
 そう自分に言い聞かせた。

 ・・・・言い聞かせたんだ、そうじゃなきゃやってられねぇ。


 同じ船の上、いやでも二人が目に入った。 コックがルフィと上手くやっているのをみるのは辛かったが、どこか安心していた。

 もう傷付けなくてすむんだと・・・。