sea blue

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「ゾロの治療が全部済むまでは、って 俺は平気だからって 見せてくれなかったんだ。
ゾロの腕を完璧に治してくれって。おで、おで・・・無理にでも診ればよかった。」


「まず ゾロを迎えに行ってくれって、毒にやられてるから急げって 解毒剤を渡されたんだ。
解毒剤か毒かわかんねぇからチョッパーに見てもらえって、まるで自分は大した事無えみてぇに笑って。
黒いスーツなんか着てっから血に気付かなかったんだ。
出航して見に行ったら 奴の下にすげぇ血溜りがあって、

・・・・・・・・・キッチンで一人逝かせちまった。」


「気付いてあげれなかったの・・・。
出来るだけ早く出航してって言ってた時のサンジ君 真っ青だったのに。」


「解毒剤は一人分しかなかったんだ・・・
俺、医者なのにサンジまで毒に侵されてるなんて気付けなかった。 
後で知ったんだけど 傷もね、銃だけじゃなかったんだ。
船に帰ってきたのが奇跡なんだよ。」


「奴は嘘つきだぜ・・・。俺なんかよりよっぽど嘘が巧い。・・・いっぱい嘘つきやがって。」


「辛かったよな。あんな酷く深い怪我で 大量に出血して 立つのもやっとだったんだろうに。」


「サンジ君、とっても綺麗だったわ。・・・苦しかった筈なのに まるで微笑んでるみたいで。」


「あぁ、笑ってた。今までで最高に綺麗だった。」


「嘘みてぇだ。もう、サンジの飯が食えないなんて。」











 遠い日のはずなのに 泣きながら話すクルーの声がやけにリアルに甦る。















 お前を海に還したあの日 ナミが言ったんだ。


「あんた達は 二人で一対だったのよ。
その剣で命を奪うゾロ、あんたと、その手で命を生かすサンジ君。
二人で一人。 
対極な様でいて なのにとても近い二人だったのよね。
あたしは二人が羨ましかったわ。」



 二人で一対。

 あぁ、確かにそうなのかもしれねぇ。
 お前が居なくなって 俺は何かが欠けちまった。
 あれから俺は 自分の身体を守る事もせず ただ戦っていた。
 意味も持たずに。
 そんな俺をナミは自暴自棄になるのはやめろ、って諌めた。
「サンジ君はそんなこと 望んでない。・・・彼が 守った命大事にして。あんたが その命無駄にするようだったら あたし許さないから。今も横に居るはずの・・・サンジ君の想いまで 奪わないで・・・。」
 悲鳴のような ナミの声は 小さかったのにやけに響いた・・・。
 本当は、あいつがお前に一番近かったのかもな。
 まるで兄妹のように 時には姉弟のように 仲のよかったお前達。
 与え育み生かす お前と、 金品を奪いながらも それによって人を生かそうとしたナミ。
 天邪鬼なところさえ 似てやがる。
 お前の言ってた通り あいつは可愛くてしっかりした母親になったぜ。
 海賊王の隣で笑う今も 魔女なのは変わらねぇけどな。







 青年期、お前に培われたこの身体は強靭で。何度死線を乗り越えた事だろう。
 おかげでお前んとこに行くのに時間が掛かっちまった。
 俺が守っているつもりでいたのに、俺は守られてたんだな。
 あれからも俺はお前に守られていたんだ。










   よぉ、待ちくたびれたか?
   そっちに行ったら テメェのクソうめぇ飯、食わしてくれよ。
   テメェの残した レシピ通りな筈なのに 
   誰もテメェと同じ味に作れねえんだ。
   何処か違うそれは、余計にテメェを想い出させやがる。
   居なくなったくせに、毎日の食事のたびにテメェは存在を主張するんだ。
   俺は 改めてお前に恋をしたんだぜ。
   ・・・なぁ、もうすぐお前に会えるんだ。
   悲しみとか恐怖なんか感じねぇ。
   お前の側に行けると思うと どこか安堵すら感じるくれぇだ。

   記憶の中のお前より ずっと歳をとった俺を見てお前は笑うか。
 
   白いものの混じった頭でも まだ マリモと呼んでくれるか。

   よくやったな 大剣豪。と言ってキスをくれるか。
  
   もっとゆっくり来やがれクソ野郎。と、俺を蹴るんだろうか。




   あぁ、逢いてぇ サンジ。



 お前の瞳と同じ海が夕焼けに染まる。









FIN



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