指輪


ねぇ、サンジくん、そのリングどうしたの?」
 食後のデザートをのせた皿を女性クルーの前に給仕している時の事。
 コックの屈んだシャツの首元からチェーンに通され、きらりと光ったリングが覗いたのを航海士は見逃さない。
「ん〜。ばび、だんがあっだどが?ざんびがだーした?」
「んもう。あんたは食べながら喋ってるんじゃないわよ、ほら、口拭いてよ。」
 先に運ばれていたデザートを口いっぱいに頬張りながら、船長が声を張り上げ。
 航海士はあきれた様に船長にナプキンを渡し、皿の前を白い手で覆いガードしている。
「おっ、ほんとだなぁ。スゲェサンジ、前からそんなの付けてたっけ?」
 無垢な瞳を大きく見開き、何事かと好奇心いっぱいに輝きを増して コックの顔を凝視するのは船医。
 その手元は食いしん坊の船長からデザートを奪われないように、しっかりと皿を抱えている。
「あ、あ、あ、あ、あ見てねぇ隙に・・ルフィ!!おめぇ、人の分まで食うなよ。おめぇのはもうねぇだろ。これは俺様のだぞ!」
 クルーが騒ぐのは何事かと コックを眼で追っていた狙撃主は、皿から眼を離した隙にデザートを奪われたらしい。
 半分空になった皿と ニシシと悪びれた風も無く笑う船長を交互に見比べている。
「ん?サンジのデザートは今日も美味ぇぞ。」
「んな事は判ってるって。今言ってるのは、人の分まで食うなって事だ。これは俺の分だぜ。」
「あぁ〜あ、ワリイ、ワリイ、」
 反省したように全く見えない船長が懲りずに手を延ばそうとする皿を  体の影に隠しながら、狙撃手はコックの姿を探す。
「あら、コックさん?」
 お代わり用の皿とトングを持ってこちらを向いたまま、後ずさりしてシンクの前で固まっている、そんなコックの肩からにょきにょきと細い腕が生え、それはシャツの合わせ目から指を差し込み 目指す金属を布の外側に引っ張り出した。
 「ああぁん  ロビンちゅぁぁん。なにするんですかぁvv 」
 固まっていた筈のコックが、胸元に冷たい指が入った感触に意識を取り戻し ハートを飛ばしながら体をくねくねとさせる。
 それはまるで条件反射?パブロフの犬?ってな感じでメロリ〜ンとなっているのに 皿を落とさないあたりがさすがコックと言う所か・・。
「素敵なネックレスね。でも前からしてたかしら?」
 考古学者は相手にせず、生やした手でコックの顎から頬を優しく撫でた。コックの鼻の穴が広がる。
「サンジくぅ〜ん、ちよっといらっしゃ〜い」
「はぁ〜いっ!!ナミっさぁん  貴女の側なら地獄へでも喜んでぇvv」
「ハイハイ、あたしは遠慮するから一人で勝手に行ってなさい。」
 くるくると回転しつつ近寄るコックは 更にでかいハートを航海士に飛ばし鼻の下を伸ばす。
 ハート目のコックはシャツの襟元に航海士の手が伸びていることに気が付かないようだ。
『シャラ』
 そんな軽い音を立てた金属に眼を向けると 慌てて胸元に眼をやって初めて胸元に有ったものが航海士の手に乗っている事に気付く。
「ナミっさ〜ん返してくださ〜ぃ。」
「さすが女泥棒ナミ。手際がいいぜ。いいかチョッパー、金目の物はナミに見せたら駄目だぞ。」
「お、おう、そうなのか。気をつけるよ。」
「あんたは何変な事教えてんじゃ〜!! あんたも納得してるんじゃない!!」
 船医と狙撃主が鉄拳に沈む。


「前から持っていたんだよ」とどこか眼を泳がせたコックの説明に どこか腑に落ちないものを感じながら、リングをチェーンから外し自分の指に嵌める。航海士の細い指にはゆるゆるだ。他のクルー達にもデカイそれはコックの左中指に一番フィットした。
「てめぇ手がでかいんだなぁ、この指輪俺にはでかかったぞ。」感心したように狙撃主が口にする。
 船医と一緒にコックの手をとり、ひっくり返したり触ったりする狙撃主の横で 諦めたのかコックは大人しくタバコを燻らしている。「食いモンじゃねぇのか・・・。」興味のなさそうだった船長は腹いっぱいになりキッチンの隅で寝息を立て始める。
「私にも見せて。」
 手に取った考古学者がリングを見詰めて「あら、」と小さく声を漏らした。
「どうかしたの?」
「なんでもないわ。」航海士の声に微笑んで応えるのは考古学者。
「折角だから付けてなさいよ」コックの手の中に戻ったリングを指差し、そろそろ寝るわ。と航海士は席を立つ。




 女部屋でふふ、と思い出したように微笑むロビン。
「何?」
「コックさんあのリング誰かに貰ったのね。」
「何で?」
「古代文字で彫ってあったの、多分読む事が出来る人が居なかったから、おまじないみたいに伝わったものなんだろうけど。」
「で、なんて書いてあったの?」
「【愛する人と永遠に】って意味の言葉よ。」
 ふわりとロビンは微笑んだ。

 ナミは先程のキッチンでサンジが給仕中1回だけ僅かに口元を引き上げ 他の人間に向けるのとはほんの少しだけ違う優しい眼をして見た一人の男・・・キッチンで騒ぐクルーの中、一人何も言わず不機嫌に酒を飲んでいた剣士を思い出した。
 ロビンがコックの胸元に手を入れたときギリと歯を鳴らし、リングをクルーが嵌めるのを片目で見て僅かに眉を顰めたのが正面に座った自分からは良く見えた。
「ねぇ、知ってる?左の中指って夢や願い事を叶えてくれるんですって。」
 ナミはベットにもぐりこみふとんを肩に引き上げるとウフフと笑った
「何?」今度はロビンが聞いてくる。
「何でもないの。ちょっと幸せな気分なだけ。」頬を緩めナミは眼を閉じる。
 あのごくつぶしは知ってるのかしら・・あの指に異性運を遠ざける、って意味も有るって。
 顔には出さないけれどやきもち焼きなゾロと、女性至上主義のサンジくんにはぴったりな指かもしれないわ。
 部屋の明かりをロビンが消す。

 ナミは指輪になど興味のなさそうだった船長が 以前空島でくれた金の指輪を枕の下から出すと 彼が嵌めてくれた指へと通した。薬指に輝く指輪は眼を閉じていても見えるようで、ナミは微笑を浮かべながら眠りに付いた。


fin










ただ指の意味だけを書くのもなんだなぁυ
と思い書いたSSです。これ単品でもよろしければDLFとなっています。
って、欲しがる奇特な方は居るのでしょうか?(汗)20053.25





指輪をつける指の意味は、諸説ある様です
その中で さくっと調べたものを載せます。


右手は、”現実の力=権力と権威”を象徴し、現実の力に関係を、
左手は、”想う力=服従と信頼”を象徴し、創造の力に関係を表しています。


【親指】 自己主張、権力など。両手に共通して、信念を貫くという意味があります。
左手   自分の信念をもって前進できる。現実の難関を突破したいとき精神的パワーを強める。
右手   困難を乗り越える(意志や望みがかなう)。リーダーの風格を与えてくれる、指導者的になり相手よりも上に立つ力が宿ると考えられています。

【人差し指 】願い、夢。現実を導く指。サクセス、意志や開拓を意味します。
左手   積極性を向上。精神的に導き、能力をアップさせる。言いたいこと、やりたいことなどが現実になる力が宿るとされています。
右手   集中力・行動力の向上。現実を導く、人々を導き教えるという行動を意味します。仕事や夢などに向かって自分の能力を発揮させる力を与えてくれる。

【中指】 その人の直感(インスピレーション)、対人関係などをあらわし、進む道を照らし先見の明を与えてくれる指。
左手   恨みや悪事から逃れられる、人間関係改善・協調性。直感やインスピレーション、人生や未来に対しての予見、願い事を叶えたいとき。 「異性運を遠ざける」「復縁を願う」というのもあるらしいです。
右手   自分の中の直感を鋭くさせます。また悪いことから逃げられる力も発揮できます。スピーディーでスマートな行動の向上に効果的。

【薬指】 愛情や創造性などを表します。願いを叶えてくれる指。
左手   創造性が豊かになる。愛情の指でもあるので愛情を育む力を得ることも。愛の約束にふさわしい指   この指は、血管が心臓につながっていることから心に最も近い指と考えられ、昔も今も愛の証としてのリングをつけるのに最適な指とされています。
右手   精神の安定・感性を高め、創造力や想像力を発揮。愛情を伝える力が生まれます。恋人同士はもちろん、片想いの人も想いを伝える力を発揮できる。 宝石の意味がストレートに出る。

【小指】 チャンスに恵まれ願いを叶える指。 お守りや自己アピールを表します。
左手   愛情のお守りにもなる指なので恋人募集中の方はつけてみると良い。 恋に限らず願いを実現する力をもっているので、願い事のある方はこの指にリングをはめて毎晩眠る前に願いを伝えてみては、
右手   自分の魅力を引き出すことが出来る(自信がつく)。お守り石をするのに良い指。