Cherry














結局クルー全員が寝てしまった為 ゾロは昨晩に引き続き見張り台で眠れぬ夜を過ごした。

朝食の時間、チョッパーに連れられキッチンに向かったゾロはドアの前で足を止めた。
昨日の今日で、一体どんな顔をしてサンジと会えばいいのか・・判らない。
傷付けた事を詫びるべきか・・・、それとも何も知らないクルーの前では今まで通りにするべきか。
いや、事実を知った今、今まで通りとはいかないだろう・・。

ドアの前で躊躇っていると階段を上ってきたルフィーに腕を掴まれキッチンの中へと引きずり込まれた。
「何突っ立てんの?座ったら、・・・おはようゾロ。」
「・・あぁ。」
どうしたらいいのか解らずに壁際で立っていたゾロに声が掛かる。
突っ込みより挨拶が先じゃねぇのか。とのナミへの文句を飲み込み、ゾロはその言葉に背を押され、湯気を立てる皿で埋め尽くされたテーブルにつく。
コンロ前でスープをよそるサンジのその背中がいつもと同じに見えてゾロはほっと小さく息を吐いた。

「サンジ‥お前大丈夫か。もうちょっと寝てろよ。」
皿をテーブルに置くサンジに向けられた、呆れたようなウソップの声が耳に入る。

「ん?どうしたんだサンジィ。飯が・・飯がどうかしたのか?」
ルフィがサンジの肩を掴み前後に揺さぶった。
「飯はテーブルに載ってんだろうが・・てめぇの飯はちゃんとあるだろ。揺らすなクソゴム‥昨日ちょっと飲み過ぎただけだ。ちくしょう・・頭痛てぇ・・」
「はい。サンジ、朝食後これ飲んで。薬飲んだら少しは良くなる筈だぞ。」
船医が薬包を渡しながら会話に混ざる。
「聞いてくれよ!サンジの奴昨日の事覚えてねぇんだぜ。朝来たらここで寝てるしよ。」
「煩ぇ。途中までは覚えてるさ、長っ鼻。てめぇの鼻切ってソテーにしちまうぞ!」
「何?サンジくんたら情けないわね。男なら酒に飲まれちゃだめよ。」
「酒は飲んでも飲まれるなって!?」
「それよ、ロビン。」
女共にからかわれ、サンジがこめかみに手を当てながらそんなぁと眉をひそめている。
「でもよぉ。こいつちゃんと後片付けして寝たみたいだぜ。流石は海の一流コックだよ。すっかり片付いてたもんな。俺ァすっかり寝ちまった。・・運んでくれたのゾロだろ、サンキュウな。」
「あら、あれだけ酔ってたのに。すごいわね。あたし達が部屋に帰る頃にはサンジくん半分寝てたわよ。喋ってる事は支離滅裂だったし。ま、面白かったから飲ませちゃったけど。あそこまで酔うのも珍しいわよねぇ。」

テーブルではまだ、コックをからかう会話が続いているが、
ゾロの耳はウソップの発言 『サンジの奴昨日の事覚えてねぇんだぜ』 から先を拾っていない。
時折サンジの方を見ると、頭を痛そうにしかめっ面になってはいるが、さしていつもと変わらなく見える。
本当に覚えてないんだろうか。
あれはサンジの中で今も未消化のまま続いてる事なんだろうか。
「ごっそさん。」
ゾロは箸を置くとシンクに皿を運びドアを出る。
外は、いい天気で風が心地よいのに、ゾロの気持ちは晴れなかった。



*******************

「てめぇは、桜に似てる。」
そう言われたのは・・あれはドラムの桜が降るのを船から見た時だった。
「俺の育った島は桜が沢山あって季節になるとそりゃ綺麗なモンだ。てめぇにも見せてやりてぇな。一斉に花がついて煌びやかでよ。でも何処となく清楚で・・散り際も潔い。 でもてめぇは、そんな所まで似るな。散り急ぐなよ。」
酒の席とはいえ、嫌われてるとばかり思っていたゾロにそう言われて以来 桜は俺にとって特別な花になった。
だから
「無駄じゃねぇか・・飾ってもよ‥。まだ咲かねぇ内に切っちまったんだ。きっともう枯れちまう。」
その言葉が痛かった。
まるで俺のてめぇへの想いの事を言われてるようで。




あのクソ剣士に 惚れてるって言ったのは 後悔してねぇ。
あれは、あの時の嘘偽りない俺の気持ちだったから。

自分でもオカシイんじゃねぇかと思った。男に惚れるなんて。
物腰も穏やかじゃねぇ。
優しい言葉一つ言わねぇ。
顔付きなんかは凶悪で。
柔らかい乳房も 細い腰もねぇ。
身体はごつくて筋肉の鎧をつけてやがる。
いつも汗臭くて、鍛錬馬鹿で。

剣のことしか頭に無いと思っていた。
強くなる事だけを追っていると思ってた。
振り向く事も、俺を気にかける事も無いと思っていた。
だから言った。
言わないと溢れてしまいそうだったから。
言って、笑い捨ててもらえると思ってた。
言って如何こうしようなんて思ってなかった。ただ伝えたかっただけだ。
・・俺に振り向くような奴じゃないと思ってた。
・・・・・・・だから・・。


罵られると思ってた。
からかうなと剣を突きつけられると思ってた。
あの強い目が真っ直ぐに俺を見ることはこれで二度と無いと思ってた。
でも何も言わずに呆気にとられた顔をしていただけだった。
なんの感情もなく俺を見るだけ。
俺に好かれるのは気持ち悪いよな・・。そう言った俺を肯定するように 暫く固まった後「別に‥‥気持ち悪かねぇ。」としか言わなかった。無理なんかすんじゃねぇ。気遣いなんててめぇの柄じゃねぇよ。クソ剣士。
同情なんて真っ平だ。
でも、肩に回された大きな手はやけに暖かくて。


あの晩。熱い身体に包まれて耳元で「いいだろ」と囁かれた。
いいだろ  って何だ? どういう意味だよ。
男に惚れたなんて言うような俺はおつむが弱くて尻の軽い奴だと、
お手頃な処理相手には好都合だと思ったか?生憎と俺は過去に男を好きになったこたァねぇんだよ。
男となんか寝たことねぇ。  その言葉にゾロの顔が緩んで綻んだ。
いつも仏頂面のあいつがだぜ、そんな事で嬉しそうにするんだ。
俺に向かって笑うんだぜ。・・たったそれだけの事で・・。
もういい、そう思った。

どうせ腐れ剣士の心なんてのは要らないと、手に入らないと解ってた。
でも、合わせる肌の温もりを 俺の中で果てる瞬間を知ってしまった俺は・・。
それでもいいと思っていたのに それじゃぁ物足りなくて。
いつか、もしかしたら、あいつが俺を好きになるかも知れねぇ。そう思って何度も抱かれた。
  でも、あいつは何も言わない。
もうあいつを見ることを止めようと思った。
奴とするのはただの性欲処理。 なのにこの身体はそれを喜んで受け入れる。
俺はあの肌の近くにいたい。そんな薄汚ねぇ欲望に目が眩んじまっているんだ。





*******************


おやつのパフェに載っていたさくらんぼを器用に蹄で摘んだチョッパーが、鍛錬をするゾロの横を通り抜け 洗濯を取り込んでいるサンジに走り寄る。
「なぁなぁ、サンジ。これってさくらんぼって言うんだろ!で、あそこで咲いてるのは桜なんだろ?もしかして、もしかして実がつくとさくらんぼになるのか?」
聴くとはなしに聞こえた声に目をやると、期待で瞳を輝かせたチョッパーが サンジの足元に絡み付いている。
手を止めたサンジは チョッパーの頭に軽く手を触れて 座るとポケットからタバコを取り出し火をつける。
その前にチョッパーも大人しくちょこんと座る。
それはまるで親子のようだ。離れた甲板からゾロはそう思う。
「チョッパー、残念だがあの花には実がつかないんだよ。どんなに咲いても果実は出来ないんだ。ほら。」
「何だこれ?」
落ちていた花柄を拾うとチョッパーに見せる。
「花は花柄の先に実をつける。それは知ってるだろ。」
頷くチョッパーに微笑むと
「この桜は花が散ると この花柄ごと落ちちまうんだ。だからあんまり実はつかない。もしも、実が出来ても食えないし、種も発芽しないんだ。他の桜は実がつくし芽も出るけどなやっぱり食えない。」
「えっ!?じゃぁ。さくらんぼって桜とは違うのか?」
「桜は桜なんだがな・・。同じ仲間でも種類が違うんだよ。だから食用じゃないんだ。
さくらんぼってのは、品種の違うお父さんとお母さんの木があって初めてさくらんぼが出来るんだ。」
「なぁ〜んだ。じゃ、さくらんぼは出来ないのか・・。」
がっくりと肩を落とす船医をヒョイと持ち上げるとサンジは膝に乗せる。
「そうさ、桜は、食べれるような実はつかねぇのさ。」
優しげな口調とは裏腹にサンジの表情は儚げで。
ゾロには良く見えたそれに 後ろ向きに抱っこされているチョッパーは気付くことはなかった。




数日後。
散り始めた桜の下で再び宴会が催される。
残り少ない桜吹雪の向こう側で桜の薄紅のように頬を染めたサンジがいる。
酒の所為か上機嫌に年少組と肩を組みおどけている。時々視線がこちらへ向けられるのを気付かない風を装って俺は隣に座る考古学者と酒を飲んだ。
サンジとはあの夜から二人になることが無く。従ってあの夜のことをサンジが覚えているのかも解らない。
俺の誤解もそのままだ。

  お前は今も俺の事を好きでいてくれるだろうか。

「剣士さん?注いで差し上げるわよ。・・何かあったの?」
空のグラスをじっと見詰めた俺を訝るように覗き込んだ学者の顔が目前に迫っている。
「な、なんでもねぇ。」
思いがけなく接近していた顔を背け グラスを差し出すと学者はウフフと微笑んで酒を注いだ。
大きな笑い声が聞こえてそちらに目をやると 倒れたサンジの上にルフィが馬乗りになってその頬を舐めようとしている。
「てめぇら何やってんだ!」
思いの外大きな声だったらしい。
クルー全員がゾロを見る。ゾロは立ち上がりかけた腰を慌てて降ろした。
「サンジのよう、ほっぺに食いモンがついてんだ。」
悪びれた風もなく答えるルフィ。
「さっき食いモン取りに行って、帰ってくるときにこけたんだよ。」
ぶっきらぼうに吐き捨てるサンジ。
「自分が転んでも料理は手放さないのは流石だったぜ。海のコック。」
含み笑いながらも感心した声を上げるウソップ。
「ま、いいじゃない。怪我無かったんだから・・サンジくん顔洗ってらっしゃい。」
「は〜いっ!んナミさんvv」
スッと立ち上がりルフィをぽとりと落とすと サンジは洗面所に走っていった。


宴の終わりはいつも同じパターンだ。
ゾロは溜息を一つ吐くと酔いつぶれた三人を部屋に運ぶ。
甲板にあふれかえっていた皿や瓶は綺麗に片付けられている。
ゾロは、今日こそきちんと話をしようとキッチンに足を向けた。
キッチンにはあの夜のようにシンクもそのままにテーブルに突っ伏したサンジが居た・・。

声を掛けても返事の無いサンジの身体を横たえると 灯りをもってシンクに向かう。
今日も話すことが出来なかったな。がくりと肩を落としゾロはシンクの汚れ物に手を掛けた。

「やっぱり、てめぇだったのか・・。」
拭いていた膨大な量の皿が残り少なくなった頃。静かな声が煙の匂いと共に聞こえてきた。
「起きたのか。」
「最初から寝てねぇよ。」
クッと笑う仕草でサンジが煙を吹き付ける。
「起きてんなら手伝え。・・で、やっぱりってのは何の事だ?」
少しむっとしながら布巾を投げ付けると サンジは片手で受け取り皿を拭き始める。
「折角、剣豪様が後片付けしてくれてんだ、中断させちゃ悪いだろ。やっぱりってのは・・・この前の事だ。俺ァ皿洗った覚えが無いんだよな。棚の食器の場所がいつもと違ってたし、こりゃ俺じゃねぇと思ってた。」
苦笑いを浮かべながら 手際よく皿を拭くと食器棚に運ぶ。
慣れたその手付きをゾロは目で追った。
「なぁ。もう少し付きあわねぇか?」
サンジは空いた手でグラスを口へ運ぶ仕草をする。
「てめぇまだ飲めるのか?」
穏やかなサンジにほっとしつつ つい聞いてしまう。
「煩ぇ。今日はもう少し飲みてぇんだよ。付き合えクソマリモ。・・ツマミ持ってくから先に甲板に行ってろ。」
手の平を振りシンク下に屈み込む姿が早く行けと言っている。それを見てドアを開けた。
桜が暗闇にぼうっと浮かび上がるその下に座り 花びらが落ちるのを見あげた。
春島の海域とはいえ夜ともなるとまだ少し肌寒い。
ゾロは 立ち上がると男部屋に毛布を取りにいった。

「おせぇよ。」
桜の下、いくつかの皿と瓶を前にサンジがタバコをふかしている。
その口調は少し怒っているようだ。
「悪ィ、これ取って来た。」
毛布を見せると笑ったのかタバコが上向きに揺れる。
「魔獣でも寒さ感じるのか。雪の中で寒中水泳してた奴が・・。」
サンジは笑ったようだ、隣に座る肩が揺れている。
注がれた酒を喉に流し込む
「?きりっとしたのみ口だが・・酸っぱいような。」
「ははは、そりゃどぶろくだからな。」
「?」
「この前の島は春島だったけど少し四季があるみたいでよ。米が取れるんだ。」
サンジは空いたグラスに濁った酒を注ぎながら続ける。
「どぶろくってのはてめぇの好きな酒と兄弟みてぇなモンで 米から出来てんだ。濾してねぇ酒って所か。」
「そんなのあるのか。」
「これも食ってみろ。」
差し出されたのは野菜の輪切りとおむすびの載った皿。
「こりゃぁ、糠漬け?」
思いがけず懐かしい味に 声が高くなる。
「米が主食の島だからな、糠があると思ってたんだ。でも市場に無くて農家まで行ったら自家製のどぶろくまで分けてくれたんだよ。いい人達だったぜ。・・てめぇの懐かしい味なんだろ。」
ご機嫌に話す声に 立ち寄った島の農村地で風呂敷包みを持ったサンジを思い出した。
「あぁ、懐かしい味だ。美味ぇな。」
思わず綻んだ顔をサンジに向ける。
「桜の下でてめぇに食わせたかったんだ。」
俺を見るサンジの顔が 月明かりしかないのに赤く色付いているのが判る。
「てめぇの島に咲いてたんだろこの花。その下でてめぇの懐かしい味を、よ。」

この船で米の酒を好むのは、俺一人。
ぬか漬けなんて食べた事があるのも多分俺一人。
俺一人の為にあの島で探してくれたのか?
いや、他のクルー達の為にもきっと同じ事をするだろう。
相手の笑顔を見るためなら何も厭わない。
こいつはそういう奴だ。
そして、俺はそんなこの男が大事なんだ。
‥‥失いたくねぇ。
くしゃみをしたサンジの後ろに回り背中から抱きしめるように座り毛布をかける。
サンジの身体がびくりと緊張するのがわかった。



*****************


キッチンで寝た振りをした俺を 運んでくれたお前は、まるで俺の事を壊れ物でも運ぶように優しく扱った。
何にも言わねぇお前だけどよ。その手は信じていいような気がするんだ。
いや。・・信じてぇ・・。
それでも、さっきのロビンちゃんとお前がお似合いなような気もしてよ。
接近した顔が 二人がキスしたように見えて慌てちまった。びっくりして思わず転んじまった。だせぇよな俺。
所詮実を成す事の無いこの桜みてぇに、男同士なんて何も残らねぇんだから・・
男の俺なんかはお呼びじゃねぇって感じで・・。諦めた方がいいのかと思ったよ。
でも、やっぱり信じてぇんだ。俺の事少しは気に掛けてくれてるんじゃないかってよ・・。

懐かしい食いモンに笑った顔は、まっすぐに俺を見て全開の笑みに変わった。
その顔に俺が弱いのを知ってるか?
いつもの仏頂面も戦闘時の冷静な顔もどれもてめぇの顔だけどよ、
滅多に見せないその顔は俺の中で特別なんだ。
その顔をもっと見せてくれよ。もっと見せろよ。・・あぁ、俺はてめぇに馬鹿みてぇに惚れてる。
それを自覚して、俺は自分の顔が熱くなるのを感じた。



****************


「おい、クソ剣士。耳の穴かっぽじってよく聞け。前にも言ったが俺はてめぇに惚れてる。でも・・」
後ろから抱きしめる背中が言葉と共に上下する。
・・とうとう言われるか。こんな俺を許せねぇと。・・許せねぇよな・・。いっその事俺を罵ってくれ。
俺は、てめぇに詫びる、それからきちんと俺の気持ちを伝える。今度は俺の方からてめぇに・・。
「あぁ。」ゾロはごくりと唾を飲む。
「てめぇは俺の事をどうでもいいと思ってるんだろうが、俺はそうじゃねぇ。組み敷かれんならてめぇのハートが欲しい。だからな、いつか俺に惚れさせるから覚悟しとけ。俺は、諦めねぇ事に決めたんだ。」
歌うように言い切ったサンジが振り返り 俺を見て泣きそうに笑う。
その顔が愛しくて抱きしめる腕に力が篭る。
「ばかコック。」
「なんだと?」
「馬鹿だから馬鹿って言ったんだ。アホ」
「俺ァ、ただ体だけの関係じゃ満足できねぇ。そう言ってんだよ。アホクソマリモ。」
ムッとした声でもがく愛しい身体をぎゅっと抱きしめサンジの首筋に顔を埋めた。
「クソコック。よく聞け、言い忘れてたがな。俺は好きな奴しか抱かねぇんだよ。」
瞬間動きの止まったサンジの体から力が抜ける。
「てめぇ、前に島で花街に行ってたじゃねぇか。・・・・・嘘なんかいらねぇよ。」
「嘘じゃねぇ。俺はてめぇが言う前から、てめぇに惚れてた。 花街の事は・・、相手も商売だからな、抱いたんじゃねぇ。それこそ処理に行っただけだ。処理に気持ちは要らねぇ。」
「・・・。男だからな、その気持ちはわからないでもねぇが・・。」
「あの頃、てめぇは手に入んねぇと思ってたからな。てめぇを抱いてから花街なんて行ってねぇ。」
「それは、・・。俺に惚れてるって事なのか?」
小さな声で呟く首筋に口づけて、サンジの体を反転させると向かい合った。
俯いた金髪の中からこちらを窺うように上目遣いで見るサンジは扇情的で。
「クソコック。俺はてめぇが好きだ。上手く言えねぇが、てめぇを心ごと手に入れてぇ。それじゃ駄目か?」
俯くサンジの顎に手をかけもち上げると 口づけた。
次第に熱くなる舌に サンジは体を離し目を反らす。
「てめぇ、・・・おにぎりが硬くなっちまうじゃねぇか。さっさと食え。」
皿を顎で指すサンジの顔は真っ赤に色付いていて、照れを隠すようにぶっきらぼうに言葉を吐く。
タバコに手を伸ばすその顔はどこか嬉しそうに綻んでいて、つられて俺も顔が綻ぶのをとめる事は出来なかった。
二人で笑いながらおにぎりを食った。
捨て漬けの分を刻んで混ぜ込んであるにぎり飯は サンジにしちゃちょっとしょっぱい味で、
その塩っけがあいつが流したの涙のような気がした。


もっとちゃんと伝えていれば、サンジを苦しめる事は無かったんだ。
ゾロは自分の言動を振り返る。
・・俺は言葉が足りねぇからな・・又てめぇを不安にさせるかも知れねぇ。
そんな思いさせたかねぇが、そん時はもっともっと又甘い言葉を 要らないと言うまで囁いてやろう。


時折絡まる視線に互いの笑みが映る。
赤くなって色付く白い肌に桜の花びらが落ちる。
ゾロはその後を追うようにサンジの肌を薄紅にかえた。






fin