クリスマスグリーン
『クリスマスと言えば、やっぱりサンタとトナカイとツリーだろ。
サンタは向こうから来てくれるもんだからどうにも出来ねぇけど、
お前はトナカイだし? ツリーなら何とかなるんじゃねぇか?
海の上ではもみの木なんて調達不能だからな。
へんてこな形だがこの際飾り付けられる木があっただけましなもんだ。
折れたみてぇに90度にまがってる幹は
海からの強風に眠そべるみてぇに倒れただけだ、気にするなチョッパー。
去年は立派な木が手に入ったけどよ、ルフィ達に先にやられちまって出来なかったもんな。
今年は俺と2人で飾り付けようぜ、みんなには内緒だぞ。
なぁチョッパー、ちょっと変わったツリーだけどいいよな。』
船縁に添うように延びた先には
緑が茂っている。
サンジが言う葉の部分は、頭と裾は緑なのにその中間は白い雪
が被ってる。
この海域は夏で 雪なんか降ってないけど。
その雪はなんだか布っぽいけど。
エッエッエッ、まぁいいよな。
手作りの飾りは数は少ないけど、飾る部分が少ないから丁度いい。
裾に位置する緑には赤い靴下を。
雪に覆われた中ほどには、プレゼントを模した飾りと、サンジと作ったジンジャーマン。
同じ生地で焼いた天使とベル。そしてトナカイは鼻の部分に青い木の実が添えられている。
それらを木から滑り落ちないように丁寧に置いて。
なぁサンジ。この木ったらよう、ちょっと動いてるんだけどいいのか?
「あぁ、風で揺れてるんだ、木も生きてッからな。」 咥えタバコでニカリと笑う。
ありがとうサンジ、俺楽しいよ。
風下で吸うサンジの煙が海に向かって流れ暗い闇に溶けていく。
──こうして一緒にいるとさ、暗闇も怖くねぇ。
ドクターに出会う前俺は、群れにも人間にも馴染めずいつも一人だった。
夜目が利くとはいっても、暗闇はやっぱり怖い。
一人ぽっちの暗闇は、孤独が口を開けて俺を飲み込んじまいそうで。
今にも飲み込まれてしまいそうで。 怖かったんだ。
不思議だな。信頼している人と一緒にいると暗闇なんて怖くないんだ。
水平線もわからない、そんな闇に居たって。
日が昇る間での暗い時間を惜しむ気にすらさせるんだ。いつまでもこのままが続けばいい。ってさ。
仲間ってホントに不思議だ──
雪の間から突き出た2本の枝はまるで腕を組んでるように絡み合っている。そこにもトナカイを一つ。
後は、てっぺんの緑だ。
ここには星を。
空をそりで滑るサンタに目立つように大きな星を。
1番大きな星をのせるんだ。へんてこな形の木に合わせて、うまく乗るように帽子の先に星をつけた。
それをてっぺんにのせて、出来上がり。
・・・なぁサンジ。 俺眠くなっちゃった。
誕生日のパーティーではしゃぎ過ぎたからかなぁ。 もう眠いよ。
今夜はここでツリー見ながら寝むりたい。
温かい木の幹に身体を寄せて横になると瞼が落ちちゃう。
本当はもっと起きていたいのになぁ・・・。
ジンジャーマンと、トナカイは取っておいてね。
ルフィが先に目が覚めたら飾ったクッキー食べられちゃいそうだから。
その二つは俺が食べるんだ。 だから・・・、ね・・ぇ とっておいて。・・・・・・おやす・・・・み。
眠ってしまった船医の言葉どうり、サンジはクッキーを外すとキッチンの戸棚の奥にしまい、再び甲板に戻ってきた。
宴の主役は ツリーの側でぐっすりと眠っている。
その反対側にしゃがむと同じ高さにあるツリーに金髪の青年は手を伸ばす。
見た目を裏切るさわり心地いい緑に指をいれて感触を楽しんでいると。
「おぃ。いいのか?」
幾分抑えた声が鼓膜をゆすぶる。
声とともに動いた緑から開いた双眼が船医を捕らえ 目じりをほんの僅かに下げた。
「眠っちまったよ。疲れたんだろ。」
昼から続いたパーティーに 他の船員はもう船室ですっかり夢の中だ。
見張りでもないのにこんな時間まで起きているほうが船医には珍しい。
腹巻にのった靴下を指でつまむと 木に模されていた男は隣で丸まるトナカイにそっとのせた。
「そんなんじゃ 温ったまらねぇよ。夏島だしな・・・風邪なんてひかねぇだろうけど。」
金髪の青年は自分のジャケットを脱ぐとその上に乗せた。
「俺は、丈夫だからな。」
「馬鹿は風邪ひかねぇってだけだろ。 アホコック。」
「うるせぇ。」
「お前が倒れると俺が困る。」
だからこっちに来い。と腕を引く男に身を預け青年はその側に腰を下ろす。
「あったけェ。」
言葉も無く見詰め合うと、自然と唇が引き寄せられるように重なった。
「メリークリスマスだ、クソコック。」
「おぅ。メリークリスマス。」
眠る頭の上の三角帽の星がそっと瞬いて 船上の聖夜は更けてゆく。
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