delicious stick







「全部食べきったら、好きにして・・いいぜ?」
「!!!」

 この一言で剣士の苦悩の日々は始まった。




 コック相手に玉砕覚悟で告白なんてモノをして  思いがけず まんざらでもない答えをもらった。ならば、その先に進みたいと思うのが健全な19歳男児ってもんだろう。
 深夜のラウンジで酒を飲みながら 仕込みをするコックと二人きりになる時間を作って、どうにかコトに持ち込もうとする剣士なのだが・・・いつも唇が触れる寸前でダメだしされる。もしかして、・・・あの告白も返事も白昼夢で、全ては積もり積もった思いが勝手に生み出した幻・・・自分の妄想だったんじゃぁねぇのか?と男が不安を覚えた頃だった。
 買出しついでの福引の景品だという (ラウンジの傍ら・・ウソップ工場から溢れそうなほどの) カラフルなパッケージを前にコックが口を開いたのは。
「全部食べきったら、好きにして・・いいぜ? お前の望むこと何でも聞いてやる。」




 それを聞いたとき テーブルの下で楽勝だと拳を握った筈の剣士は。  ウソップやチョッパーにあけてもらった山ほどの菓子をぺろりとたいらげた船長の隣で、初日からげんなりとした表情をうかべていた。
 無骨な指に不釣合いな小さな袋。 指先は滑り袋はなかなかあかない。  普段ジャンクフードを食べない彼は油で指が汚れていることに気づかないのか 先ほどから小さな袋相手に悪戦苦闘している。 それとも知らず知らずのうちに 体が封を開けることを拒否して力が入らないのか。

「はぁ〜。 やっぱ物足んねぇ、サンジ肉食いてぇ。 肉ぅ」
 自分の食べた数倍の量を既にその腹に納めた男が、目前で騒ぐのを 恨めしそうに横目で見ながら 剣士はようやく明太子風味の袋をあけ、口に入れた。
「・・・・つっ。」
 一日目にして、上あごが美味い棒と擦れて悲鳴を上げる。
──どう考えても、食いすぎだろう。  こんなくだらねぇ事させて何考えてやがんだこの野郎。 それでもてめぇはコックの端くれか? 栄養面はどうなってんだ!? 
 男は 普段栄養素なんて微塵も考えずにいるくせに こんな時ばかり浮かんでくる疑問には この際気付かなかったことにしておこうと 心の内で思いながらもぐもぐと口を動かした。













 切欠を失うと次の一歩を踏み出すのはなかなかに大変だ。
 間近に迫るゾロの顔が真剣そのものだったから、つい照れくさくなって顔を背けてしまった。
──同時に考えたくないことを想像してしまった。  気持ちを確かめ合えたのはいい・・・有りえねぇと思ったことが現実になったんだ嬉しくねぇ筈がねぇ。 だが、キスからその先は? 
 俺達ァ男同士だけど有りなのか!? 今まで ンなもん自分には関係ぇねぇ遠い話と思っていた。 が、全く聞いたことない話ではない 船乗りの間では案外頻繁に耳にするようなことだ。 ・・・・・好きあってれば。 触れたいんなら。 ・・・有り、なんだよなきっと。
 けど。 
 そこでいきあたった どちらが上なのか下なのかという疑問。


 俺が、ゾロを? 抱く? 

 サンジだって男だから 征服されるよりは、する方がいいなんてのは心の隅にしっかりと持ち合わせている。・・・だが。 ゾロに触れたいとは思うが、どうにもゾロに・・・男に突っ込んでいる自分を想像できないのだ。 あいつのケツを前に・・? ちょっと待て・・・。 いや?! いやいやいやいやいやいや 無理だ、無理。 俺はきっと勃たねぇような気がする。 ってか、萎えちまうぜ? きっと。
 じゃぁ、百歩譲って俺が受け入れる方を?  ???    ・・・・・絵的にはその方がまだマシだ。
 そうは思っても・・・・・いや、やっぱそれも無理があるんじゃねぇか? 俺達男だし? 告ってきやしたけど、あいつもノンケだってコトは、いままでの上陸で嫌ってほど思い知らされてきた。 だから、諦めていたのに。 
 思いが通じちまうってのも難しいもんだな・・・。
 堂々巡りの思考のままサンジは戸惑った。
 第一自分は 『俺はてめぇを抱けないから お前が俺を抱いてくれ』 なんて 男の沽券にかけて口が裂けたって言えない。 でもゾロ・・・俺はお前に触りてぇ。 お前もきっとそうなんだろ?




 一度、拒絶してしまったら、次からも同じように先に進めなくなった。 なのにそれをじれったいと思ったのは他ならぬ自分だ。 自分でゾロをかわしておきながら 小さなしこりが積もっていく。
 もしかして。
 唇さえ触れようとしない俺に いい加減イラついてねぇか?
 こんなんで俺・・・愛想を尽かされてねぇか?
 野郎になんぞ惚れてるなんて言ったのを やっぱり後悔してんじゃねぇのか?

 夜毎酒を飲みに来るのを確認して (まだ、嫌われたわけじゃねぇんだな、と) ホッとしてるなんて、お前は知らないだろう。
 嫌われる前に。 お前がもういいや、と投げ出す前に。
 俺もお前に触れたいんだと、 触れて欲しいんだと、 どうにかして伝えたい。
 でも・・・天邪鬼な俺が今更そんなん・・・素直になれねぇから。 
 なぁゾロ、どうしたらいいんだ?

──そうして、時間だけが過ぎてしまった。 そこへ今回の思わぬ景品の菓子。 山ほど届いたそれに サンジは縋ってしまったのだ。











 ウソップ工場を乗っ取っていたカラフルな侵略者は残り1/6といったところか。 事業主の彼が、ようやく正常稼動できるとぼやきながら 残りの袋を端に除けて場所を確保し、新作の研究だと張り切っていたのは昨日のことだったなとサンジは振り返る。
 眉間に皺の数を増やした緑頭の男が半ばうんざりと、袋から顔を出したうまい棒に噛り付くのを 目の端に捕らえながら、コップに水と胃薬を用意する。 折りしも期限の翌日は ゾロの誕生日。  それまでにけりがついたなら、いつもの宴会同様に主役には好きなもんたらふく食べてもらって大騒ぎして その勢いで・・・イタしちまおうと思っていたのに。 
 やはり1000個なんて無理だったか?  常人にはやっぱ無理だよなぁ。 でも奴は普通じゃねぇしな。 

 自分の出した条件をゾロはクリアできるんだろうか?・・・いや、クリアしてもらわねぇと先に進めなくてこっちが困るんだが。 ・・・それともあの皺にはこんなバカなことするほど 大して俺に興味はねぇけど、なんとなく付き合いでしょうがなく口にしている苦悩が刻まれているのか・・・。 いやいやいや、きっと胃がもたれたりしてるんだ きっと。 ・・ そうだ。 ・・よな。 うん。  ここ数日まりもの通常の食事の量は、このお菓子の・・・俺の所為で極端に減ってしまっているからな。 やっぱり悪ィ事条件にしちまったかな、・・・・ま、俺に興味なければ食うのも止めるよな。  ・・・それともあの野郎 あんな顔してるくせに意外と義理堅いから 俺に興味なくても食ってるのか?
──でも。 でも。

 本来物事にはそれほど頓着する性質ではないが、事ゾロと自分の関係の先行きと成ると 考えずにはいられない。
 逃してしまった切欠を取りもどすために出した 本当はどうでもいい条件。
 今更だが、一週間という期限をつけてしまった自分を 我ながら恨めしく思うサンジだった。




「げぷ。」
 なにやら怪しげな異臭を口内から放ち、剣士がふらふらと席を立つ。  
 そんなゾロは、もう自分の全身がうまい棒に侵略されてるんじゃないかって考えが頭を過ぎったりしていたりする。 それでも食べることはやめられないのだ。  一歩足を踏み出してやおら振り返ると、おもむろにうまい棒の山に手を翳し そのまま数本を鷲掴みにして無表情で腹巻の中にしまった。
 開けたままのドアから見える背中は、心なしか疲れた表情を残して 甲板に消えた。












「おっ。 ゾロこれ貰っていいか!?」
 割れないようにと腹巻から出したうまい棒を横に置いて 筋トレをはじめたゾロに 通りがかりの船長がびよんとゴムの腕を伸ばした。
「おい!・・・・・ダメだ。」
「だってもうゾロの分以外残ってんのないしよぉ・・・・腹へったぁぁぁ。」
「お前・・・、俺の五倍は食ってんだろうが。」
「ん〜? でもまだ食えるぞ!? 昨日で食べ終わっちまったから今日食ってねぇし♪  いいじゃん。 食べるの手伝ってやるよ!」
「手伝ってくれなくて結構だ。」
 ルフィの手から 男は毅然とうまい棒を守る。
「サンジとの約束・・・明日までに食べ終わんねぇとダメなんだろ?」
「!?! 何でそれをっ? コックが言ったのか?」
「ぅんにゃ。 話してるのをドアの外で聞いた。」
 悪びれた様子など微塵も無く ルフィは首を大きく振りそう言った。
「聞いたんならわかるだろ。 これは俺が一人で食わねぇと意味がねぇんだ。 ほっとけ。」
「いいじゃんか、・・・ゾロのケチ! 俺なんかゾロの倍の倍の倍は食べたんだからな、ゾロが食べれなかったんなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺がサンジ好きにしちゃうからなっ。」
「・・なっ!そんなんさせねぇよ。 俺の分と・・・・・・・サンジには絶対手を出すなよ。」
「ふん。 ケチだなぁーゾロは。」
 唇を尖らせて拗ねた船長は 暫くの間ゾロの周りを物欲しそうにフラフラとしていたが、男が絆されないと見て取ると 名残惜しそうに船首に去っていった。
「ったく。 散々我慢したんだ。 横からかっさわられてたまるかよ。」
 『好きにする』 とは言っても サンジに肉料理をたらふく作ってもらうつもりだった船長の思惑をよそに いつになくむきになった男は、見当違いに呟くと 盗られまいと再びしまいこんだ腹巻から取り出したパッケージを 勢い良く開けて がぶりとうまい棒にかぶりついた。










 日が傾き始め洗濯物を回収しにきたサンジは たまたまそんな様子を目撃した。 別に隠れるつもりも無かったが、声を掛けようとして、たまたま二人のやり取りに出て行く切欠を失って 白いシーツの影で俯いていた。 その顔にはほんのりと赤みが差している。


 普段呼ばない自分の名前を ごく普通にルフィに言ったゾロ。
 ウンザリしているであろう菓子を 強請られても渡さなかったゾロ。

 ──ゾロは付き合いで食ってるんでも、俺に飽きたわけでもねぇんだ。


 いつからか頭の片隅に付きまとっていた不安が、ほんの少し軽くなるのを感じた。
 サンジは スーツの胸からタバコの箱を取り出すと それを軽くゆすって一本口に挟み、マッチに火をつけた。
 ジジッと小さな音がして白い紙に火が移り、すぐに赤い色が落ちると白煙がくすぶる。
 深く吸って、息と一緒に白煙を吐き出し 洗濯物の向こうに視線を向ける。 垣間見れるその先では、剣士がまた 小さな袋相手に悪戦苦闘しているところだった。 それを見てサンジは小さく笑うと肩の力を少し抜いた。





 不安は一つ消え去ったが、全てがなくなった訳ではない。

 いや、でも。
 とサンジは頭をふるりと振った。
 それだけで充分だとも思う。

 男同士だろうが、やり方がいまいち解らなかろうが、多分自分が下になっちゃいそうだろうが。 
 あいつが。
 剣以外に執着を示さないあの男が。  この俺にご執心なんて  ひょっとしてとんでもない事なんじゃないのか?
 恥ずかしいとか照れくさいとか言ってらんねぇな。 
 それよりも、もっと大事にしてぇもんがあるんだ。
 第一 剣士がルフィに告げたあの一言だけで、こんなにも嬉しくなっちまってる自分がいるのは事実。
 サンジは大きく煙を吸い込むと 豪快に吐き出し タバコを波間に投げて前に進んだ。










「よう、剣豪。 これ片付けんの手伝ってくれよ。 そしたら俺も手伝うから・・・そいつ・・・早く食って片付けちまおうぜ! あぁ? 間抜けなツラ晒してんじゃねぇよ; それでなくても怪しい顔してんだから普通にしてろっての。  へ? いいんだよ。 俺が食いてぇんだから 食わせろ! (食い終わってくんねぇと俺が困るっての。) それともてめぇはセクシーかつキュートな俺様には興・・・・・・き、今日はいい天気だよなぁ いやぁ、雲ひとつない、天晴れな太陽だぜ!! ・・・・・あぁぁぁぁ、何急に凶悪な顔になってやがる・・・クソッ;  と、とにかく。 明後日のてめぇの誕生日まで菓子ばっかり食い続けるつもりか?! ちったぁ胃を少し休ませとけ。 こっちはてめぇ好みのもんを用意するつもりでいるんだ、 ありがたく思いやがれってんだクソまりも。 折角の食材を無駄にさせる訳にはいかねぇんだからな! とっとと、食っちまおうぜ。 ・・・なッ!! 言い訳なんかしてねぇぞ; 何言ってやがる・・・ニヤニヤしくさりやがって クソ野郎が。 ・・・・おぉっと、洗濯物! 油っぽい手で触んじゃぁねぇよ、 洗ってこい! さっさと終わらせて、てめぇの菓子食」
「食いおわったら、次はてめぇを食う。 ・・・・くれるんだろ、お前。」
 煩い言葉ごと塞いだ唇を開放すると 草原色の髪を持つ青年はニヤリと笑って シーツの向こう側へと身を翻した。
 倉庫の扉が 開いて閉まる音がした。
 早足で戻ってくる靴音に サンジは苦笑を浮かべる。
「あの野郎、ちゃんと洗ったのか?」
 そう呟くと、一足先に手を伸ばしてシーツを取り込んだ。 抱きしめた布は太陽と微かな石鹸の匂い。 鍛錬で汗をかく前の日向で寝転ぶゾロの匂いと同じだ。 鼻先に触れたその匂いをサンジは肺一杯に吸い込んだ。

 足音がすぐ後ろで止まった。
「ほれ、クソ剣士。 皺々にしねぇようにちゃんと畳めよ。」
 振り向きざまシーツを男の顔面に押し付けた。
「っぷ。 何しやがるクソコック。」
「明後日だ。」
「あ?」
「明後日まで、お預けだ。 ・・・誕生日祝いのデザート、期待してやがれ。・・・・・・っ、クソっ///」
 頭から被せられたシーツをたぐり寄せて、ようやく開けたゾロの視界に映るのは。 夕日に染まり始めた風にはためくシーツの波と、そこに手を伸ばす金色の後ろ姿。 僅かに見える頬と揺れる金の中からのぞく耳が一際赤く見えるのは 夕日の所為ばかりではないだろう。 顔を見られるのが嫌なのかサンジは向こうを向いたまま 洗濯物を取り込んでいた。
(やっぱり素直じゃねぇな・・)
 滅多に素直な素振りを見せないサンジが、たまに見せるそんな様子にゾロは胸に何かくすぐったいものが込み上げてくるのを感じて、未だ後ろ向きの青年の背後から 手にした白い布を広げると自分ごとそのシーツに頭からくるまった。
 たまらなく抱きしめたかった。  素直じゃない、この男が。


 狭い布の中で金髪の顔を背後から覗き込むと 彼は吃驚した顔を引き締めて すぐに不機嫌そうな不遜な顔をつくりゾロに向けてきた。
「何しやがんだ、てめぇ。 皺に・・」
 本日二度目のキスに言葉を奪われたサンジは、「・・・・いてェ・・・・。」 と唇を離し眉を顰め自分の口元に手を当てる剣士に 何事かと向き直る。 不遜な態度をとりながら小首を傾げるその顔も 何もかもゾロには愛しく映ってたまらない。 今すぐにでも押し倒してしまいたいくらいだ。・・・が。
「口内炎が治ったら 嫌だっつっても食うからな・・覚悟しとけ。」
 ゾロの言葉に 一瞬呆けた後ぷっと吹き出して笑う。 薄いオレンジを纏う布の中でサンジの柔らかいその表情は、ゾロだけに向けられたもう一つのプレゼントだった。





終わり







あぁぁぁぁ・・・・・・・・こんなんで、こんなんでいいんでしょうか(誰に聞いている;)終わってもいいですか?
以前ブログの方に書きかけた「うまい棒ゾロ」なのですが。
うまい棒とはいっても・・エロも それらしい表現もできませんでした。
何でうまい棒かといいますと実はこのようなサイトを見たからなんですね〜(汗)
この方の彼女さんがなかなかいかしてます♪

・・・こんな私に、どなたか うまい棒(ゾロの・・は勿論サンちゃんのも///)話下さい。
読んで頂きありがとうございましたv 

2006/11/07