その海は空の色を映す。



サンゴが波に砕かれ 長い年月をかけ白い砂にはぐくんだ この浜辺では、
海が空の色を忠実に映す。
雲で陰れば くすんだ青に。
青い空が現れれば、空よりも鮮やかな青を描き出す。

透明度の高い海の中を コックが魚のように泳ぐ。
船の上からでも自由自在に泳ぐ様子が手に取るようにわかる。
南国特有の色とりどりの魚達と戯れるように泳ぐコック自身が、まるでカラフルな魚になってしまったように感じ 不意にゾロは不安を覚え シャツを脱ぐと海に飛び込んだ。

「こンのクソマリモ。魚がいなくなっちまったじゃねぇか」
飛び込んだ勢いに 魚が散ったらしい。
コックは 掛かったしぶきを目元から拭いながら海中を見詰める。
「暫くすりゃ、また寄って来るだろ。」
「まぁな。」
「ここも違うのか?」
あれからもう何度目の台詞だろう。
オールブルーとの噂を聞いて走らせた海は一箇所や二箇所ではない。
度重なる間違いに恐縮したコックは、航海士に通常の航海を依頼して麦藁海賊団の旅を続けた。

3日前に出航した港で偶然教えられたオールブルーの情報は 航海の足を鈍らせることは無かったが 目指していた海とも違うものだったようだ。
「違うな、・・・この海域にはノースとイーストの魚がいねぇ。」
散々潜って魚を見たあとの がっかりしたような、それでいて安心したようなコックの声。
あれから、・・・俺が最強の大剣豪の肩書きを背負うようになってから・・・
コックは何かを恐れている。
口には出さないが、夢を叶えた後のことを考えているんだろうと思う。

「もしいたら・・お前どうする?」
「え・・・。」
コックは答えに詰まって眉をへにょりと下げて笑った。
「そりゃぁ、その魚で美味いもん嫌というほど てめぇらに食わせてやる。」
「その後・・だ。」
「・・・俺は、・・・・・・・・・。」
「俺は、そんときゃお前と一緒に船を降りる。用心棒でも 買出しの荷物もちでも何でもやってやる。ウエイターってやつもな。」
言葉を濁して視線を流したコックの声を遮って話す。
自分の望みより仲間の・・・俺の・・・未来を心配するような奴の事だ、
きっと何か考えがあってもそれを口にするには いろいろ余計な事考えちまうんだろう。
だったら俺がお前の背中を押してやる。
「そんな事・・。」
「最強の名はお前の横にいても守れる。だから、余計な事は気にすんな。」
「・・ゾロ。///用心棒なんかいらねぇよ。」
そうだろうな、お前は充分強い。最強の剣士と呼ばれるこの俺が、それは保障する。でも。

お前と一緒に居たいのは俺の方だ。

「隣に居ても剣の腕は鈍らせねぇ。 ・・・たまには修行に出るかもしんねぇが、必ずお前ンとこに戻る。 だからお前は戻った俺に美味い飯食わせてくれ。」
くしゃりと歪んだ顔をしてコックが笑った。
「てめぇがウエイターなんかしたら 可愛いレディが寄り付かねぇ。」
「オールブルーを見つけたら・・・。」
「見つけたら・・な。・・・・てめぇのウエイター姿見て笑ってやろうじゃねぇか。」
透ける青い海の中で コックが俺の脛を蹴りつける。
照りつける太陽の反射した波がキラキラと光る向こうで 魚がぱしゃりと跳ねた。








空色の海   END






日記SSに書いてたんですが、思ったより長くなったのでこちらで(笑)
空を映す海の様子は、 サンジとゾロの関係にもいえるんじゃないかな、とちょっと思ったり?
サンジが笑ってりゃ ゾロも満足げに口端上げて寝てるんだろうし、
ゾロが笑ってりゃ サンジも思うまま動けるんじゃないかと・・。
ただ、小さな遠慮(気遣い)に2人して 足踏み(下手すりゃ後退)しちゃいそうで・・・。
訳わからないの読んでいただきありがとうございました。
2005.10.8