ナビ

 「・・・・で、ここを通るのは何回目だ?」

 空に向かって紫煙を吐きながら 呆れたように長身の青年が言った。
「てめぇは、俺を案内する為に来たのか? それとも一緒に迷子になる道連れが欲しかったのか?」

 各々用事を済ます為、皆別れてそれぞれに上陸したのだが、市場の外れでたまたま剣士と料理人は出会った。
 剣士が -珍しい食材を見つけた- と料理人に告げたときには それを扱っている店を案内すると自信満々に言っていた筈なのだが。
 見覚えのあるこの場所を通るのはそれから五回目だ。



 粗方の用足しが終わって 手の空いていた料理人は 珍しい剣士からの申し出を受けてみる事にした。
 なんと言っても、この剣士は 料理人に対しても料理に対しても 関心が薄いのだとばかり思っていたのだ。
 作った料理には、可も不可も言った事は無く、それを手掛ける料理人への態度などは 意見が合わず喧嘩するだけの存在のようで、それらには興味が無いと思っていた。
 それなのに今日に限って 食材の事なんか言ってくるから料理人は好奇心を通り越して それを食わせてやりてぇ等と親切心さえ沸いて剣士の言うままに歩いたのだ。

 三度までは、マリモが案内なんか出来るのかと好奇心の方が先に起っていた。
 四度目は、いい加減辿り着けるだろうと期待した。
 そして、やっぱり無理な相談だと 五回目にそこを通り掛った時に身に染みた。
「白い家で庭に赤い花が咲いてるところを右、三毛猫のいる塀を左、引き売りの花屋の後ろを通って・・・。」
「てめぇ、猫も花屋も動くんだよ、そんなモン目印にしてんじゃねぇ! ・・この島の家は殆ど白じゃねぇか!赤い花も そこら中で咲いてるぞ。もっとましなモン目印にしてろ。」 
 ブツブツと指を折りながら考える剣士に 料理人は苛立つようにがりがりと頭を掻き毟りながら ある意味、あのゾロがあんな目印を頼りにこの場所に五回も来れた事の方が凄いと料理人は思ったりする。
「だってよ、てめぇ島に寄ると 珍しい食材見て目を輝かせてるじゃねぇか。 それにそんな初めての食材でも美味しく料理すっからまた 新しいつまみが食えるかと・・・思ってよ。」




 は、?????? 美味しく料理。ったか??

 今の台詞誰が言った??
 料理人は剣士の思わぬ一言に 顔が熱くなるのを感じた。 
 剣士はと言えばそんな料理人の変化にも気付かずに 相変わらずきょろきょろと周りを見渡している。

 今日は剣士の意外な一面を知っちまったな。
 料理人は気を落ち着かせると
「今日はそろそろ、日が暮れるから船に戻ろうぜ。 鮮度のいい烏賊が手に入ったんだ 刺身と 肝あえ作ってやるよ、そろそろ帰らねぇと氷が融けちまうぜ。」
 手に持った袋を剣士の方に掲げて見せた。