| ぺたり |
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ぺたりぺたりと足音を立てて 近付いてきた気配に片目を開けると、目の前に現れたのは上半身裸のコックだった。
珍しくタバコをふかしていないコックは これまた珍しく俺の前に居るというのに口を噤んだまま近付いて ぶるりと頭を一つ振ると 覗き込むように俺を見た。 俺の頬に コイツのきんきらした頭から飛んできた 水滴が冷たく当たる。 何時に無く無言で じっと俺を見るコイツを俺も何も言わず見返した。 髪から水が滴り 頬を撫で 首筋を通り 痩せてはいるが筋肉質な腹筋を滑り 唯一身につけているハーフパンツの腰に 吸い込まれていくさまを 俺は目で追った。 ごくり、知らずに喉を鳴らしていた。 裸足のコックはどこか無防備だ。 戦闘における武器ともいえるその足を晒す時、コイツは心の中まで無防備になるような気がする。 そしてそれを証明するように 何時もの言葉で鎧を着けた様な口煩いコックは 今どこかに姿を消したままだ。 その表情も三割増可愛く見えたりするから 何とも不思議なものだったりする。 「何やってたんだ?」 「洗濯。 途中からあいつらの水遊びにつき合わされたけどな、お前の服も洗ってやっから出せよ。」 声を掛けられほっとしたように口を開く。 その向こうから年少組の騒ぎ声と水音が風に乗って聞えてくる。 「夏島が近いんだな。」 「あぁ、お前寝てばっかりだから気付かなかったんだろ?」 コックは呆れた様に俺を見た後、 「てめぇらしいな。」 そう言って ふんわりと笑った。 それはそれは無防備な笑顔で。 |