熱の温度  5










 照らしだされた顔色はお世辞にもいいとは言えず、さらさらな筈の髪は色を落とし 汗ばんだ額に張り付いていた。
 熱があるのに青ざめていたのなら即チョッパーを探すところだが、 ・・・上気して赤くなった顔色にちょっとほっとして。 染まりすぎたその色にすぐにまた、不安を覚える。


 熱の所為か、力の無い潤んだ瞳がぼんやりとゾロを見る。
 表情もなにやら いつものコックとは違いすぎる。 伏目がちな彼はどういう訳か男だというのに扇情的に写って。
 ゾロはそんな彼の様子に 数日前に感じた動悸がまたしても蘇り、頬が熱くなるのを感じ。 サンジから一度目を逸らした。






「おい、飲め。 水だ。」
 ベットの枕元、木箱に載せられた水差しから白湯をコップに移したゾロは サンジが身体を起こすのをじっと待つ。 
 ゆっくりと身体を起こしたサンジの乾いた唇に コップを当てるとゆっくりと傾けた。
「・・・いら・・ねぇ・・。」
 ぼんやりと開かれていた瞼が伏せられ 軽く顔を背けられた。
「飲まねぇとダメだ。」
 コップの傾きを更に加えると 白湯がサンジの唇に触れる。
「・・・ん。」
 こくり。 ほんの一口だけを口にして唇を閉ざしたサンジの顎を水が伝う。
 ベットに吸い込まれそうな不安定な背中にゾロは腕を回すと 熱を持った汗ばんだ身体を支える。
 触れた腕に染込んでくる熱さに不安を感じた時 サンジの瞼が開き潤んだ蒼がゾロを見た。 伝った水が灯りに反射して、白いそのシャツまでを濡らす水の道を照らしだす。


 濡れた首筋が、肌に張り付いたシャツが、視界に入る。 どきどきと心臓の音が煩くなる。
(あぁ畜生。)
 コックを見ていると体が熱くなるのはどういうことだ。 俺一体どうしちまったんだ・・・?
 なにやら、サンジを真っ直ぐに見ていられなくなって、・・・同時にどうしていいか判らなくなった。 混乱した頭のまま コップに残った水を一気に含むと ゾロは、サンジの顎を掴みその唇に顔を寄せた。
 柔らかい唇の感触に 自分は熱があるわけでもないのに頭がくらくらとするのを感じながら、ゾロはそこに白湯を流しこむ事に専念した。

 水。 飲ませねぇと。
 チョッパーも言ってたじゃねぇか、水分を取らせろって。 ──そう自分に言い訳しながら・・。

 熱を持った唇を舌でノックして 顎を持つ手にほんの少し力を入れて。
 僅かに開いたその隙間にゆっくりと移してゆく。


サンジの腕が厚い胸板を押し、顔を引き剥がそうとするのを ゾロは背に回した腕に力を込めて封じ込めた。
 咳き込んで半分以上をこぼしながらも こくりと喉が動くサンジの様を ホッとした想いで見る。
「な・・・にしやがんだ、てめ・・ぇ。」
 サンジは赤い顔を更に染め上げて 潤んだ目で睨みつけてくる。
「・・・ったく。 熱のある時はちゃんと水分を取らせねぇとダメだって チョッパーが言ってたからよ。」
「チョパーが・・・あぁ。 そんなこと・・言ってた・・な。」
 自分でも何であんな事をしたのかわからない。 言えないいい訳を隠すように わざと呆れている振りをした。
 それで理解したのかしなかったのか・・・。 焦点の合わない蒼い目が それでも何度か宙を彷徨うと、また伏せられた。 熱の所為か。 それとも言ったことに納得したのか。 

 熱によりかさついた唇。 それに一度触れて押さえの利かなくなったゾロが、大人しくなったサンジの唇に触れて再びそれを繰り返しても、 同じように半分ほどの水を口の端から零しながら それでもなんの抵抗も反論も無かった事に。 気をよくしてゾロは、何度も何度も唇を重ねた。 
 白湯を含んで流し込むその行為は、 サンジの喉が水を飲み込み咥内に何もなくなっても離れ難く。  回数を重ねるごとに深く入り込もうと 徐々に長くなってゆく。

 「は・・・・ぁ。」
 荒い呼吸を更に荒くしてサンジが湿った息を吐く。
 開いた唇に水を送り そのまま歯列をなぞり 上あごの感触を味わい 奥に引っ込んだ舌を探す。 柔らかく弾力のあるそれに自分の舌をあわせる。
 水差しの水が残り半分になった頃。 縮こまって動かなかったサンジの舌がゾロに答えるようにおずおずと反応を返し始め ゾロは最初の目的もすっかり忘れ その唇を熱心に貪り続けた。


「ぐっ。かはっ、ごほごほっ。」
 大人しくされるままだった体がゾロの体を押して 力の緩んだその隙に顔を背けて咳き込む。
「わ・・・悪ィ; 大丈夫か?」
 心持 身体をゾロとは反対方向に傾けてサンジは咳き込んでいる。  向けられた襟足が金の中から白い肌を見せて、ゾロはごくりと唾を飲み込んだ。 ほんの気持ち向けられた揺れる背中をそっと撫でてやると。  毀れた水と唾液がシャツを濡らしてしまったのが触れる手から伝わってきた。 









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