「俺さぁ、あんたの事好きなんだ。付き合ってくれないか?」




 あの暑い日。
 あれが始まりだった。











    KOKUHAKU



















「そんなに付き合いたいんなら、抱かせろ。女みたいに俺の下で鳴いてみろ。そしたら付き合ってやってもいいぜ。」

 言った自分でも反吐を吐きそうな台詞に 一瞬戸惑いを見せたのに コックは頷いた。









 ナミとウソップに背中を押され甲板にやってきたコックは いつもの無駄に高いテンションを感じさせず、手摺の側に立って 咥えたタバコに何度も火をつけ直す。
 ようやく火の点いたタバコをゆっくりと吸い込むと 煙をはぁっっと吐き出して言ったのがコックの冒頭の台詞だ。 


 聞いた瞬間 嘘だ と思った。

 いつも俺の対極にいるような 女至上主義の男が本気でそんな事を言うとは。
 俺の事をからかって 反応を見て面白がるんだろうと。
 クルーのゲームに巻き込まれて 笑われるのが関の山だと。


 それから暫くの間 コックは毎日のようにドリンクの差し入れの時に繰り返し言ってきた。
 俺を好きなのだと。



 信用なんかしなかった。
 本気だとは 全く思わなかった。
 もし百歩譲って、本気だったとしても 俺はコックをちょっと強ぇコックとしか思っていない。
 

 第一、あいつは男じゃねぇか。

 いつだってくだらない事で俺に突っかかってきやがって 殺人級の蹴りまで繰り出すムカつくばかりの野郎だ。
 女と見れば鼻の下を伸ばし でれでれとしてやがる。



 


 ナミもウソップも顔を会わせる度 コックに答えてやれと煩く言うようになった。

 毎日繰り返されるそれがウザかった。
 はっきり言って この状態から抜け出したかっただけだ。
 あまりにもしつこくて・・

 好きだなんて言われても迷惑だから、遠ざける為に言った台詞に あいつが頷くなんて思わなかった。

 だって、普通 あんな事言われて頷く訳ねぇよな。
 俺だったら速攻 斬り捨てちまうような台詞。
 

 それに頷くなんて やっぱり俺をからかうつもりなんだろう。
 てめぇら、グルになって俺の反応を見て影で笑うつもりか。
 何日もかけて芝居をするなんて 何て手の込みようだ。くそったれ。










 ・・・それならそれで、俺にも考えがある。
 俺をからかおうと芝居する てめぇの態度を逆手にとって、てめぇに馬鹿なことをしたと思い知らせてやる。 




 女だと思えばきっとやれない事は無い。
 ・・・多分。
 あの顔を見ず、女だと思えば・・。
 













 三日月の夜だった。
 他のクルーが甲板で寝てしまった後 俺はコックを格納庫に引きずり込んで押し倒した。

 顔なんか見えない方がいい。
 男の低い声なんか聞えない方がいい。
 そうじゃねぇと萎えちまう。 



「声なんか上げたら 他の奴らに聞えちまうぞ、それでもいいのか?」
 抱かせろと言った時には頷いたくせに、上に乗った俺を押し返し 抵抗しようとするコック。
 はっ、やっぱりありゃぁ、俺をからかってたんだな。
 そう思って 浅はかな奴だ。と喉の奥で笑いが漏れる。
 でももう今更あがいても遅ぇ。俺は俺をからかおうとしたてめぇを 利用させてもらうだけだ。







  暗闇の中、細い月の光は 格納庫にまでは届かない。