女の子ってのはなんて柔らかくっていい匂いがするんだろう。




 肌理の細かい滑らかな肌。

 耳元を撫でるように頬に触る指先さえも 細く白く滑らかで。

 視界に降りてくるオレンジ色の髪は柔らかそうで、
 
 シャンプーの香りがほんのりと漂って鼻孔をくすぐる。

 頬に当たる素足は、とてもとても柔らかで 思わず手を伸ばしたくなる。


 ほぉら、床に投げ出された右腕を持ち上げれば、
 柔らかい膝にもう少しで触れる。

 もう少しで…。





「サンジく〜ん。その手は何かなぁ…」
「あぁっ! ナミさんの足がとても魅力的だったもので……。すいまっせん!!んナミっさぁ〜ん。」
















Head on the lap













 ふふっ。


 その辺の男なら躊躇い無く撫で回してくるってのに、サンジくんたら大人しく手を引っ込めちゃった。
 サンジくんのこんなトコロが好きよ。












 物足りないけどね。











 サンジくんの髪って、やっぱり凄くサラサラなのね。

 一度触れてみたかったのよ。

 膝に乗っている横向きの 形良い小さな頭。

 指の間を滑り落ちる金の髪は 日に当たって輝きを変える。

 お手入れしている私でさえ羨ましくなるような艶やかな髪。

 なのに毛先はやっぱりちょっと傷んでて……勿体ない。

 赤く色付くことはあっても、焼けることのない肌は白く。

 偶然な振りをして触れたそこは 吸い付くように滑らかで。

 あぁ、サンジくんて、ホントに髭が薄いんだ。

 白い肌にも目立つ事のない髭剃り跡と 申し訳程度にぽよぽよと生える顎髭。

 指で摘んで引っ張ったら、やめてくださーい、なみさぁん。て、サンジくんが笑った。



 目を細めてくすぐったそうな笑顔は子供みたい。
 少し顎寄りの形のいい耳たぶを摘んで引っ張って中を覗いて、綿棒を近づけた。





 んん〜もう、鬱陶しいわねぇ。 やきもち焼きの剣士は・・・。 さっきからゾロの視線を感じる。 そんなに気にしなくてもサンジくんを取ったりしないわよ。
 無駄に重い鉛棒を振り回しながら、ちらちらとこちらに視線を寄せるゾロに わざと、 どーだいいでしょう、 という顔を作って笑ってやった。
 ゾロは目が合うと、苦虫を噛んだような顔して そっぽを向いちゃった。




 うふふっ。
 たまには、こんなのもいいじゃない。



 弱さを決して見せようとしない彼。
 プライドなんかないかのようにおどけて振る舞って、本音を隠す、誰よりもプライドの高い彼。
 自分より他人を優先させる彼。
 
 そんな彼の頭が膝に乗り 私に無防備に急所を預ける。
 それはまるで、人に懐く事のないしなやかな山猫を手懐けたようで、……酷く高揚するの。


 そのうなじ、生え際に近い耳の後ろに 赤い跡を見つけた。
 山猫に触れる唯一の男。
 赤い跡を付けたであろう男。
 その男の焼け付くような視線さえ あたしを高揚させる。



 毛並みのいい山猫は すっかり目を閉じているわ。
 ・・眠ったのかしら?

 彼に少しでも休息を……。





 サンジくんを私の膝で甘やかしてあげたかったの。
 食糧不足になってから 多分あまり寝ていない彼。



 今朝も顔色は優れなかった。














 今朝は喉が渇いて眼が覚めたの。

 外はまだ薄暗いけど、キッチンにはサンジくんが居るかも知れない。
 この船のコックは勤勉だから・・・。

 目指すキツチンは 薄く灯りが灯されていた。
 暖かそうな灯り。
 外気は肌寒く吐く息も白い、もう一枚羽織ってくれば良かった。 そう思いながら あたしはキッチンへと飛び込んだ。

「おはようございますナミさん」
 ドアを開けると、キッチンの主の声が掛かる。
 あたしが部屋に入るのと同時に席を立ち、冷蔵庫を開けドリンクを取り出した。
 あぁ、ここは暖かい。 まるでサンジくんの人柄のよう。
 レモンの浮かんだコップを受け取り こくりと喉に流した。
 さっぱりして美味しい。 冷えすぎてもいない。 水分を欲しがる体には最適だわ。
 こうしてサンジくんはいつでも その時にふさわしい物を用意してくれる。 ・・・でも、
「ねぇ、サンジくん。それも飲みたいな、」
 香ばしい香りの暖かそうな湯気のたつ 2つの並んだカップを目で示す。
「仰せのままに…ちょっと時間が掛かりますが…」
 笑顔を浮かべて、席を立つサンジくんはコーヒーをネルドリップし始め、そのままコンロに近付き火を付け鍋をかき混ぜる。
 リズミカルに動き始める背中。
 サンジくんの左手が耳に触れる、その手の白さが目に入った。










「・・・・・。 で、なんであんたがここにいるわけ? 」



 カップの前には、仏頂面の剣士が居る。
 話しながらゾロの座るイスの向こう側に目がとまった。
 壁際に人一人分よりかなり大きな空間を ぽっかりと空けた毛布が、丸く円を描いて盛り上がり置かれている。
 まるでなにかが そこから抜け出したようなままの毛布。
 きっとここで夜を明かした彼がいた場所。
 昨日もあまり眠れなかったのだろう、色素の薄い彼の目元にはクマが見えた。
「お待たせしました。」
 私の前に丁寧にカップを置き、
「てめぇも飲むだろ。」とソーサーから ゾロの空になったカップにもコーヒーをそそぐサンジくん。
 私がミルクと砂糖を入れ終わると サンジくんはゾロのカップへと砂糖一匙とミルクを多めにいれる。
 まるで当たり前のように……スプーンでかき混ぜられたカップが あたしの目の前を通り過ぎ、無言でゾロの前に置かれる。
 ゾロは再び調理台に向かうサンジくんの背中を優しい目で見てから、カップに目を移し口に含むと 満足そうに少し口端を上げた。


 あら、こいつってば、コーヒー飲んでる姿も意外と似合うじゃない。
 いつも酒を飲んでる姿ばかり見てたから 知らなかったわ。
 大体、こいつが珈琲を飲むのなんか見たのは、あたし数回しかないわよ。それも片手で足りる位。
 それなのにサンジくんは ゾロのコーヒーの好みを聞かなくても知ってるワケね…。
 ふ〜ん。 何でかしら…ね。
 あたしなんて毎日珈琲を飲んでるのに、ミルクも砂糖も入れてもらった事無いわよ。

 ちょっと妬けちゃうじゃない。

 二人の間の当たり前のように行われた何気ない仕草。 
 今まであたしが知らなかっただけで、こんな風に朝を二人で過ごしていたのかしら。





 小さな金属音が静かなキッチンに鳴り響く。
 ウソップ作のタイマーに目を向けると 耳に手を当てたサンジくんがタイマーを止める所だった。
 何度か耳を軽く叩くような仕草をして頭を傾ける。
 何だか眉を顰めながら サンジくんは手を洗って オーブンを覗いた。
 オーブンドアを開けると中からいい匂いが漂ってくる。 食欲をそそる匂い。

 取り出して、少しだけ切り分けられたサンジくん特製のパンは、目の前でまだ薄く湯気を立てている。
「朝食までのつなぎに どうぞ。」
 そこにオリーブオイルと粉チーズの入った小皿が 笑顔と共に添えられる。
「あたしもこっちでいいのに。」
 ゾロの前に出されたカップには 切り落とされたパンの耳が並んでいる。
「いいんですよ。クソ剣士様はパン耳がお気に入りみたいですから。」
 パン耳を一本抜き取ったら ゾロが慌てた様にカップを自分の側に引き寄せた。
 それを横目で見ながら 口に含む。
 何も付けなくたって そのままで充分美味しいパン。
「美味しvv」 「ごめんねぇ。 ナミさん。 次の島に着いたら 新鮮で美味しい食事沢山作るからね。」
 呟いた声に被る様に聞こえてきた サンジ君の声は本当に申し訳なさそうで・・・。
「期待してるから、」
 精一杯の笑顔を向けて 皿の上のパンを一切れちぎって口に入れた。













 ルフィーが食料庫を荒らしたのは 二週間ほど前。

 見事にって言うくらい 肉類が食べ尽くされていた。


 って言うか、肉を生で食べてお腹壊さないのかしら あいつは。
 まぁ、長期の航海に備えてサンジ君が保存処理してたみたいだけど。
「絶対サンジくんが調理したのの方が 美味しく食べれると思うんだけど・・・。」
 呆れてそう言ったら 
「サンジのは保存加工しただけでも美味しいんだぞ!」
 なんて、胸張って答えられちゃった。

 そんなアホは、取り合えず 拳固で殴ってマストに括り付けといた。
 ぐるぐる巻きにされて 騒ぐ船長は放っておく。
 調べると 根菜類と小麦粉などは手付かずに残っていて 
 それらと荒らされなかった冷蔵庫の食材が 次の島までの食料となった。
 残り少なかった肉類は細々と・・それでも一週間以上前に無くなった。
 タイミング悪く 島影も見つからない。
 サンジくんは 普通にしてたけど、白い顔に日に日に疲れが見えるようになった。




















 ヤベェ。これで野菜も終わりだ。

 騙し騙し使ってきた食料も いい加減本格的に尽きてきやがった。
 後は粉類。
 これをどう調理するか・・・。クルーの健康を維持できるか・・・。
 俺の腕にかかっている。

























 大食漢のルフィが荒らすのは 殆どが食料で。
 だから俺の水代わりとも言える 酒類は大抵手付かずで残っている。


 コックが男部屋で寝る事が無くなって、もう10日になる。

 ルフィの奴が備蓄を食っちまってから コックは部屋に戻らなくなった。
 夜キッチンを覗くと決まって コックはレシピ帳を見ている。
 見ては時々溜息を付く。
 その繰り返しだ。

 日々増えているタバコの本数。
 クルーの居ない所で吐く溜息と 徐々に濃くなってゆく目の下のクマ。
 減っているであろう睡眠時間。

 せめてもの救いは 俺の前では溜息を隠さない事。

 クルーの命を預かる 食を賄う者としての責任感を 有り余るほどに持っているコック。
 かかる重圧を表に出さず、普段通りにクルーとふざけ合う姿。
 無理すんな。 と言う俺に、 「コックが困った顔してたら 皆不安になるだろ。」 と眉を下げるコック。 


 後から行くから先に寝ろと笑うコックが、部屋に来る事はない。



 だから、俺もキッチンで眠る事にした。

 何時までも寝ようとしないコックを背中から抱きしめ 
 部屋の壁に凭れ、座り込む脚の間に 痩せた体を座らせる。
 あれからコックが物を食べている姿をあまり見ていない。
 俺が言っても口には入れないのだろう。
 奴は意外と頑固だからな。
 もし何かあったら 倒れそうになる前に気絶させてでも点滴を打つ。そうチョッパーと俺は話をしている。
 心配だが、それまでは奴の好きにさせておくしかねぇ。
 ならばせめて
 少しでもゆっくりと眠れるように 俺がそうしてやれたら・・。 

 部屋から持ち込んだ毛布に 二人で包まる。
 寝付けずにいるコックも朝方ようやく眠りに付く、すぐに又起きて動き始めちまうが……。
 俺の腕の中で熟睡しているらしい短時間に 俺はほっと息を付く。
 欲望のまま抱いて 体力を消耗させる事は憚れた。

 俺はコックが眠った後 そっと耳の後ろを吸う。
 それに気付かないほどの眠りに付くコック。
 コイツからは決して見えない場所、そこに俺の刻印を残す。

 そんな日がここ数日続いている。
 



















 毛並みのいい山猫。


 妙に耳に手をやる彼。それをダシにして無理やりにでも 寝かせたかったの。
 あたしの膝なら喜んで寝るかと思ったのに 意外にも遠慮なんかしてなかなか来やしなかった。
 いつも軽口叩く割には 身持ちの固い彼を半ば脅すように説き伏せて ようやく横にさせたというのに。

 すっかり寝ていると思っていた彼は 甲板の声にすぐに飛び起きると
「ナミさんvv気持ちよかったよぉ ありがとう!!」
 と笑顔を残して去っていった。
 体温と心地よい重みの無くなった膝がちょっと悲しいわ。
 ・・・熟睡してたんじゃなかったのね。




 「ルフィ。竿がひいてるぞ!」
 広い海の真ん中なのに 垂らした糸の引かれることの無かった数日。
 海域に魚も海王類もいないんじゃ無いのかと詮索するほど 何も釣れなかった。
 ようやく待ちに待ったであろう一言に反応したサンジくん。
 その気持ちはとってもわかるけど・・・。 
 まだ釣れた訳じゃないのよ。ただ竿がひいただけよ。

 ウソップの期待に満ちた声がちょっと恨めしい。
 ちゃんと釣れてるんでしょうねぇ。今のサンジくんをぬか喜びなんてさせないでよ。
 じゃなかったらゆっくり休ませてあげたいんだから。


 結局、収穫の無かった釣りに見切りをつけた三人は 甲板に仰向けになりそのまま寝ちゃった。
 全く、こういう時には役に立たないんだから。













 翌日


 みかん畑で本を読んでいたら 急に本が蔭って。
 振り向くと 光の中にルフィが立っていた。
「なぁ、ナミ。 俺にもやってくれよ。」
「? 何やるのよ? 相変わらず、主語の無い男ねぇ・・。 あんたって。」
「昨日 サンジにやってただろ。 あれだ!」
 サンジくんにやった事? ルフィったら眉間に皺作っちゃって・・・。 どこかのやくざれ剣士みたい。
「あたし、なんかした?」 
 あ〜ぁ、今度は口まで尖がらせて・・。 もう、ガキじゃないんだから。
 ん〜?サンジくんにやった事? 昨日してあげた事?
「あれだあれ! サンジ、ナミの膝んトコで寝てたろ。」
 パタンと本を閉じたあたしの横に座ったと思ったら、体を横にして膝の上に頭を乗せ、
 にしし・・。 と満足げに笑うと 麦藁を外しあたしの頭に被せてくる。
「ちょっと、ルフィ?」
「これだ。」
「あんた昨日 サンジくんの耳掻きしてたの見てたの?」
 確かその時ルフィは 釣りをしてたんじゃ?
「見たぞ! 駄目だぞナミ。ナミとこうしていいのは俺だけだ。 わかったか?」
「ルフィあんた・・・。 何言ってるのかわかってんの?」
「わかってる。 けど、やなんだもん。」
 やなんだもんって。 もん、って。 あんた・・・。 
 どこか拗ねたみたいに聞えるのはあたしの気のせいかな。 
 やだ、あたしったら顔が熱いわ。
「じゃぁ。 もうサンジくんを困らせないで。 食料を盗み食いするのはやめて?」
「お・・おぅ。 努力する。」
 きっと麦藁の陰になってあたしの顔見えないわよね。 多分あたし今真っ赤だわ。
 満面の笑みを浮かべて膝の上のルフィは笑う。
 つられてあたしも笑う。
 原因を作ったルフィの 期待出来ない努力を思いながら あたしは再び本を開いた。























 タバコを吸いにデッキに出ると その先でゾロが目を瞑り手摺に凭れていた。
 相変わらず、何時でも何処ででも寝れる奴だ。

 少し離れて隣に立ち ゆっくりとタバコを吸う。
 放物線を描いて海に落ちる吸殻を見てから 視線をゾロに向けるとゾロが片目だけ開けてこっちを見ている。

「おい。 ちよっとこっちコイ。」
 ゾロは立ててあった刀をガシャリと音を立てて掴むと 立ち上がり船尾へと向かった。
 大した仕込みも無く 丁度退屈していたところだ。
 俺は大人しく ゾロに続く。

 目的の地へ到着したらしいゾロが壁を背にして再び座る。
 一度俺を見た後 視線を彷徨わせもう一度俺を見る。
「ん。」
「?」
「・・・んっ。」
 俺を見上げながらゾロの目が胡坐をかいた自分の足を時々見る。
 何だァ? 俺様とアイコンタクトなんて10年早えぇんだよ。
 自慢じゃねぇが、・・・何が言いてぇのか 全く分からねぇよ。 
 おいおい。 眉間に皺寄ってきてんぞ、クソ剣豪。
 おっ。 一層皺が深くなった。 怖ぇよお前。 チョッパーがいたら逃げてくぞ その顔。
「何だよ。」
「・・・。」
 今度は無言で てめぇの足、太ももの辺りを手で叩き それと俺を交互に見る。
 顔は・・気の所為かほんのりと赤くなってねぇ?
 もしかして、これは・・・・・。抱っこ・・・・・・・・・・・か?

 もしも〜し、ロロノアさん!? 抱っこです・・か?
 俺に膝に座れと そう言ってんですか・・?
 おいおい、まさか! こんな昼間っから? ・・・・公衆の面前で、抱っこ・・・・?
 いい歳したでかい図体の男が二人で、抱っこすんのか?
 何でそんな薄ら寒い事・・・要求してんだこいつ。
 腹減りすぎで おかしくなったか。

 栄養面は仕方ねぇとして、ちゃんと食わせてるんだけどなぁ。やっぱ栄養素が足んねぇか。
 あぁ、この際 自ら海に飛び込んで なんか取って来るか。
 こんな時に海水浴は体力異様に消費するからなぁ、避けてたんだけど。 しゃぁねぇな。
 健全なマリモ育成の為だ。 他にも育ち盛りがいるしな。
 スーツの上着を落とすと 手摺に足を描け海を覗き込んだ。
「こっちだ。」
 腕を掴んだゾロが 俺を引っ張る。
「おい止めろ。 判った。 判ったから、手ぇ離せ。」
 俺は慌てて 周りを見渡す。 抱っこなんてクルーに見られたかねぇよ、クソボケマリモ。
「誰もいやしねぇよ。 ルフィとナミはみかん畑。 ウソップとチョッパーは部屋に篭もって研究だと。」
「は〜っ。」
 開放された腕を擦りながら わざとらしく溜息を付いてやった。
 クルーの動向をチェックしてのお誘いかよ。 マリモの癖に用意周到だな。


 ……さて、判ったって言っちまったしな、クソ。

 抱っこってのは 向かい合って座るモンなのか? 
 それとも 後ろ向きで背中向ければいいのか?
 とりあえず、顔見ると照れちまうから。
「そうじゃねぇ。」
 背中を向けて腰を下ろそうとした俺の腰を手で押し返された。
 ん? 違うのか? 
「じゃ、何なんだよ。 前向きかお前。 そりゃちょっと……。」
「クソコック、何赤くなってんだよ。 いいからここに寝ろ。」
 ゾロは胡坐の膝を叩くと 俺を見る。
「はぁ〜〜っ? ……はいはい。 寝りゃいいんだろ、寝りゃ。」      
 
 ゾロの膝は 筋肉質で硬い。 昨日のナミさんとは大違いだ。
 いい匂いもしねぇ代わりに 汗臭い男の匂いが微かに匂う。
 滑らかな肌の代わりに ごわついた生地が頬に当たる。
 柔軟剤だ、柔軟剤! 明日からコイツの服にも使ってやる。 甘ったるい匂いが嫌だなんて言わせねぇぞ。
 でも フローラルの香りの剣豪なんて ……ちょっと嫌だ。

 ごそごそと 後頭部の後ろ、多分腹巻の中を探ってるんだろう、ゾロの手が頭に当たる。
「何すんだよ、人の事寝かしておいて。」
「まァ待て。 これだ、これ。」
 目の前に出されたのは 細い木の棒。
 先は曲がっていて その反対側の先端には白い羽毛が付いて 風にぽよぽよと動いている。
「???」
 思わず見上げたゾロの顔は 逆光だったけれど悪戯でもするガキみたいに笑ってるようだった。
「これは 俺の故郷の耳掻きでよ。 ナミなんかの綿棒とは訳が違う。」
 見せてみろ。 と言うゾロに恐る恐る耳を向ける。

 傷付けたり、痛かったりしたらオロス。 そう言うつもりだったのに 
 意外にも繊細な動きで 気持ちいい。


 ホカホカと暖かい日差しと ゾロの匂いの中、俺はウトウトと睡魔が襲ってくるのを感じた。























「あら、こんな所に。」
 見張り台に立つウソップの「島が見えたぞー」と言う叫びにも 姿を見せないと思ったら
「……熟睡ね。」

 船尾で壁に凭れて眠る二人を発見した。
 眉間に皺を寄せ 大口を開けて眠る剣士と その膝に頭を乗せ涎を垂らしている料理人。
「海賊船だなんて 思えないわ。」
 なんて のどかな光景。


 わざと声を出してるってのに この二人は起きやしない。
 サンジくんなんか昨日、人の膝の上じゃ寝なかったってのに 全くどうかしてるわ、この船の男共は。
 ゾロの鼻を指で摘むと んがっ っと鼻を鳴らして片目を開けた。

「島が見えたわよ。」
 そんな寝ぼけた顔で睨まれても怖くないんだから。
 そんな事より 早くサンジくんに教えてあげなさいよ。
 食料の補給を何より心待ちにしている料理人。
 海図に載ってるあの島ならきっとそれも出来るはず。
 船首の方ではしゃいでる三人組の面倒はあたしが見てるから……、


「接岸準備手伝って。」
 あたしは ゾロの鼻を指で弾くと 踵を鳴らして船首に向かう。

 背中に感じるあったかい空気が消えるのを残念に思いながら……。  
 










 fin



  3000HITありがとうございますvv
  どうにかこうにか3000に手が届きました。
  これも遊びに来てくださる暖かい方々のおかげです。
  これからも、どうぞよろしくお願いします。

  3000HITとナミさんの誕生日に寄せて・・・・。