「‥‥‥肉、オレ肉がいいなぁ。」
少し考えて、そう答えた
A thing needed
「何が欲しい?」
なんて聞かれても、俺が今欲しいものは手に入らない。
なりたいモノには自分でなるから却下。
欲しいものは、もう人のモノだし。
サンジの髪が妙に視界に入ると思ったのはいつのことか。
羊の上から振り返ると
甲板で光を弾いて揺れる色。
飯のおかわりを盛る後頭部も 鈍く輝き。
月夜の見張り台で、月と同じ色に染まる。
その金色はどこにいても
暗闇でさえ小さく光を放ち。
側に寄るといい匂いがする。
飯の匂いだけじゃない。タバコの匂いだけじゃない。
懐かしい匂い。
匂いといえば、ナミもいい匂いがする。
ぎゅぅっと
抱きしめたくなるようないい匂い。
2人の匂いはどこか似ているようで
ぜんぜん違う。
側に置きたい匂いはナミ。
側にいたい匂いはサンジ。
サンジの匂いの側は居心地がいい。
サンジが視界の中にいると安心する。
だって、あいつ。口では酷ぇ事言うけど 優しいんだぜ。
足癖悪い癖に、‥‥自分で蹴った癖に、凄く心配するんだぜ。
それにすごく優しく笑うんだ。
その側にいる事が俺、とても嬉しい。
側にいると見守られてるみたいで、安心する、
‥でも心配なんだ。あいつ 強いんだけど、
人の為に平気で危険に飛び込んで 傷だらけになりそうで。
だから、俺は船長として ちゃんとしなきゃなって思う。
誕生日に何が欲しい?って訊かれて とっさに浮かんだのは サンジの笑顔。
いつでも側にいたい。
でもよ。気付いたんだ。
俺が好きなサンジの笑顔は ゾロと一緒にいる時の顔なんだ。
あの時。
記憶を奪われたあの時。
サンジが一番いつもと違ってた。
あんなに他人行儀なサンジ初めてだ。
まだナミやゾロのように船を降りて出て行った2人の方がわかりやすい。
サンジは突き放すでもなく、気を許すでもなく、とってつけたような作った笑顔で場を取り繕うとしてた。
知らない大人の顔をして 俺達と話した。
あの時の笑顔は嫌いだ。
俺が話しかけても記憶の無いサンジは、やっぱり作り笑顔で。
‥‥‥‥なのに ゾロにだけは笑わなかったんだ。
作った顔でもなく 取り繕うんでもなく。
で、姿を消したゾロを見つけ刃と靴底を合わせて サンジは一瞬不敵に笑ったんだ。
記憶も無いってのに、ゾロと会ってどこか安心したみたいに。
それはゾロも同じで。
それって、俺には見えない繋がりが二人にはあるって事だろ。
あの時以来 二人の時とサンジ一人の時をつい比べちまう。
俺達と話すとき サンジはよく笑う。
ウソップのウソを聞いて一緒に。
チョッパーと遊んで。
俺より少し大人だから、しっかりしてるけどアホな事一緒にやって笑ったりする。
ゾロがいる時サンジはあんまり笑わない。
でも他に誰もいない時とか、喧嘩してる時 サンジは時にガキみたいに 時に穏やかに笑うんだ。
あのガキみたいな顔。俺好きなんだけどさ。
他のクルーにあんな顔見せない。
きっとゾロがいるからサンジはガキみたいに笑えるんだ。
俺がサンジの側にいて安心するように、サンジもゾロの側にいると安心するのかもしれねぇ。
だから俺が欲しいサンジの隣は もうゾロのモノなんだ。
ゾロも大切な仲間だ。
その側で笑ってるサンジが見れればいい。
もう一つ欲しいと思っていたモノ。
いつからかナミは俺の側にいる。
ただの仲間だと思ってたけど、何時からか気になって。
強い女だけど
その強さが心強くて
でも心配で。
だから隣で笑ってるナミを見ると安心する。
いつでもナミが 笑ってればいいと思う。
あの気の強い瞳から 涙が零れなければいいと思う。
ナミの事を考えるとすごくドキドキして 抱きしめたくなる。
それが恋ってものだとナミが教えてくれた。
ナミも同じ様に俺を思ってくれてるって。
いろんな海を見て 冒険を一緒にしようって。
側に置きたいナミは 何時からか俺の隣にいてくれる。
だから、俺の欲しいモノは 「肉」なんだ。
開いてくれたパーティーのテーブルには大きな肉。
テーブルの向かいには ナミとロビンが。
左にウソップとチョッパー。
右はゾロと 給仕に立つサンジの席。
肉に噛み付く俺を見て、みんな笑ってる。
「船長さん、おめでとう。ほっぺにソースが付いてるわよ。」
「ルフィ、おめでとう、怪我したらすぐ言えよ。」
「このキャプテンウソップ様が 乾杯の音頭取ってる最中なのに。」
「キャプテン、・・おめでとう。」
「ルフィ。おめでとう、食べ過ぎないでよ。」
「慌てなくてもまだまだ沢山あるぜ。ルフィ。」
クルーの笑ってる顔が好きだ。
俺は大きな骨付き肉を頬ばると 腕を伸ばしてみんなを抱きしめる。
この暖かい船とかけがえの無い仲間と一緒にいられる事が 俺の、麦藁海賊団の誇りであり、望みだ。
fin
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